四十八手夜話 4
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「僕がなぜ、今日こんなことを言いだしたかわかるか、進藤」
「お前の誕生日だから」
「それはきっかけにすぎない」
「………」
「君と僕との性生活の充実を図るためだ」
「十分、充実してんじゃない? 一週間に一度、多いと二度は会ってるしやってるし、
オレは別に欲求不満なんか感じたことないよ」
「違う、中身の問題だ。そもそも君は、僕達の関係とその将来について真剣に考えた
ことがあるのか?」
将来と言ったって男同士だから結婚できる訳でもなし…と思ったが、角が立ち
そうなので黙っていた。
アキラは情熱的に続けた。
「僕は、…僕は出来れば君と一生つきあっていきたいと思っている。二年後三年後も
君とこうしていたい。だからこそ、この関係を維持する努力をおこたっては
いけないと思うんだ!」
アキラは力強く拳を握った。
「そこで、僕は日本やアメリカの離婚の理由について調べてみた。その結果、実に
その原因の四割が性生活の不足あるいは相性の悪さにあるとわかった。その他
直接的な喧嘩などの原因も性生活の不一致が原因のストレスから来ると考えられる
ものがあるから、そういった間接的なものまで混ぜると性生活が原因の離婚は
実に6割以上になる」
いったい何の資料を調べたんだと、ヒカルは百万回アキラを問い詰めたかった。
「では、その性生活の不満の第一位は何か。それはセックスのマンネリ化だ。惰性
のセックスによって、恋人達や夫婦の親密な関係も簡単に壊れてしまうんだ!」
とりあえず、ヒカルは頷いておいた。
「僕は君との関係を大事にしたい。だからこそ、そんなくだらない理由で君との
関係が終わってしまうのが耐えられないんだ――なのに、君はなんだ!」
アキラはヒカルの横に置かれた紙の束を指さした。
「いきなり正常位では、いつもと同じじゃないか。ちょっとは違うものを選んだら
どうなんだ!それとも、もう遅いのか……、もう君は僕との関係に飽きてしまっ
たのか?」
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