月下の兎 4


(4)
嫌な直感が走った。
アキラはオレを逃がす為に何らかの方法で彼等の気を引こうとしたのではないか。
そう思いながら壁伝いに歩いていると3人の男達が何やら話しながら
向こうから走って来たので慌ててその場のコンテナと壁の間に身を隠した。
連中もふた手に分かれたらしい。
息を潜めて彼等が通り過ぎるのを待つ。
「くそっ、どこへ行きやがった」
「まあいざとなったらあっちがあるさ。なかなか綺麗な顔していたじゃないか。」
「オレはこっちが好みだったなあ。」
壁に接しているせいだけでなくヒカルの背中に冷たい感覚が走った。
ぎりぎりと心臓が痛む。アキラは捕まってしまっている。
―オレのせいだ。
警察を呼ぼう、そう思って携帯を取り出した。

「どこへかけるつもりかなあ?坊や。」
ヒカルが驚いて振り返ると通り過ぎたはずの連中の1人がコンテナと壁の隙間を
覗き込むようにして立っていた。
その男が伸ばして来た手から身を引いてかわす。
「チッ」
男は若干身体の幅が大き過ぎてヒカルが居る所まで寄って来るのに間があった。



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