初摘み 4


(4)
 二人で歩いていると、一軒の洋菓子店が目に入った。女の子がさざめきあうその店を見て
「ケーキ買って帰ろうか?」
と、アキラがヒカルに笑いかけた。誕生日の仕切直しをするのなら、自分がそれを買うべきだろう。
「塔矢、オレが払う!」
「いいよ。今日は進藤が代表選手になったお祝いだからね。」
何でもないようにさらりと言われて、ヒカルは言葉に詰まった。何とも言えない感情が
身体の奥から湧いてきてヒカルを戸惑わせた。
――――――どうしたんだろ…なんかドキドキしてる…

 アキラの家に足を踏み入れたとき、人の気配が全くないことに驚いた。
「誰もいないの?」
「うん。」
アキラの両親が、現在留守がちなのは知っている。しかも、行先は外国だ。すぐに連絡の
取れる国内ではない。日本にいるのと外国にいるのとでは気持ち的に全然違う。
 こんな広い家に一人きりで寂しくないのだろうか?ヒカルが真顔で訊くと
「もう慣れたよ。」
と、アキラが静かに笑った。
「それに、今日はキミがいるし…」
たったそれだけの言葉で、ヒカルは訳も分からず紅くなった。



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