heat capacity 4


(4)
背中には冷たい壁。
片足を抱え上げて身体を密着させている進藤の顔にはうっすらと汗が滲みはじめていた。
彼の身体には相当の負担が掛かっているのかも知れないが、可哀想だからやめようとはこれっぽっちも思わなかった。
肩に食い込む進藤の爪が気持ち良い。
「そんなに社との対局が快かったのか。ボクと、するよりも」
「……っ、塔矢、とは、比べられない…っ」
少し考えれば、僕が言ったのはセックスの事だと解りそうなものだが、多分その時の進藤にはまともに物を考えるという事すら不可能だっただろう。彼は素直に対局の事を指して答えたのだと思う。
それでも僕の中の苛立ちは収まりを知らずにいた。自分が子供じみた嫉妬をしている事ぐらい分かっている。なのに、口からは正反対の言葉しか出て来ない。
「何がよかったんだ、そんなに。ここがこんなになるくらい」
既に先走りの液体で濡れているそれを指で弾くと、進藤は可哀想なぐらいに震えて大粒の涙を零した。
「自分、が……、考えも、しない所に、…石、置かれた時……自分の、躰、……知らない部分に、触られた、みたいに……感じて……おかしく、なる…」
もどかしい気持ちを拙い言葉でなんとか伝えようとする進藤を、その時ばかりは愛おしいと感じる事が出来なかった。例え、それが社との対局に限った事じゃ無くても、その言葉は僕の中の焔を無駄に巻き上げるものでしかない。
虚ろな目で、熱っぽい吐息を吐く進藤が、憎々しくて仕方が無かった。
噛み付くようなキスをした。
進藤の理性も、本能も、何もかも融かしてしまえ。そうして最後に残るのが僕だけになれば良いんだ。頭の片隅でそんな事を考えながら、息をつく事も許さず、口腔を嬲り尽くす。
進藤は、既に抵抗する意思を失ったかのようだった。僕にされるがままに口を開いて、時々快感に身を震わせる。
ねちゃねちゃと絡むような卑猥な水音が、誰もいない室内に響いていた。
「ん……っ、は、あ……ぅん、…」
酸素を恋しがった進藤を解放してやると、その唇の端からは嚥下出来なかった唾液が弧を描いて顎へと溢れる。
気付くと進藤は無意識に僕に下半身を擦り付けていた。
繋がったままの状態で身体を動かしている所為か、時々不自然に身体を竦ませては、それでもまた何かに憑かれたようにゆるゆると身体を揺らす。
進藤の長い睫に光っていた涙が目を閉じた際に大きなひと粒の雫となって零れた。



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