平安幻想秘聞録・第二章 4


(4)
「では、藤原さまのお屋敷に?」
「いえ、藤原さまだけではなく、緒方通匡さまもお会いしたいそうです
から、内裏に赴くことになりそうです」
「内裏って、帝のいるところだろ?」
「えぇ、宮中です」
 今で言えば、国会議事堂で大臣に会えと言われているようなものだ。
大胆不敵なところのあるヒカルでもさすがに背中がぴきーんと緊張する
のが分かった。おまけに、緒方通匡というのは、あの緒方だろう。いろ
いろと世話になっているわりには、saiの一件もあってどうも緒方が
苦手なヒカルだ。
「それって、いつ?」
「それが、今日にでもと」
「今日〜!?」
 先程、文が届いたと言っていたのに、やけに急な話ではないか。
「今日は、昼から内裏で帝が宴が開かれることになっているのです。人
の出入りも多いですから、それに紛れてこっそりとやって来いと」
 正面切って堂々と参内、というわけにはいかないらしい。
「人が多いとかえって見つかったりしない?」
「表はね。警備の者に話を通して、裏門から来いということでは?」
「その通りです。それに、内裏にいるところを誰かに見られても、宴に
招かれたと言えば、見咎められることはありませんから」
 ヒカルの顔を晒すわけにはいかないだけに、面倒なこともある。
「ごめんな、いろいろと」
「光、これくらいどうということはありませんよ。牛車を用意させます
から、それに乗って行けばいいだけのことです。大丈夫ですよ」
 にっこりと微笑む佐為に、ヒカルも弱いながらも笑みを返す。
「うん・・・」
「では、話がまとまったところで、昼餉にしましょうか?(笑)」



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