sai包囲網 4
(4)
佐為にネット碁を思い切り打たせたことを後悔してない。好きなだけ
碁が打てて、零れんばかりの笑みを浮かべる佐為を見ているのは楽しか
った。ただ、純粋に佐為に碁を打たせてあげたかっただけ。
その結果、saiがネット上だけではなく、多くの棋士にその存在を
追われていることも、アキラに言われるまで気がつきもしなかった。騒
ぎが大きくなり過ぎて、佐為にもうネットでは打たせてあげられなくな
ったことだけが残念だった。
塔矢名人との一局もそうだ。自分がsaiに関わりがあると知られる
危険を承知の上で、名人に対局を申し入れ、承諾を貰えたときは自分の
ことのように嬉しかった。
そこまで思いを巡らせて斜め上の佐為を見る。期待に反して佐為は眉
を顰め、何かを耐える表情を浮かべ、こちらを見てはいない。
佐為・・・。
「進藤」
「えっ?」
「僕の話を聞いてた?」
手を取られたまま、覗き込むようなアキラに意識を目の前に戻す。
「あっ、ごめん。本因坊のじーちゃんのこと、だったよな?」
「そう。桑原先生がね、お父さんとの一局、君が自分にハンデを背負わ
せて打ったと言ったんだ。僕はそのとき、タイトルホルダーのお父さん
相手にまさかと思ったけど、今はね、それを信じる気になったよ」
「な、何で?」
「saiとの一局を見たから」
「saiとの、一局?」
「対局の間中、ずっと君を思い出してた。最初に会ったときの君、次に
一刀両断された一局、そして、その後見た、囲碁大会での一局。すべて
がsaiに繋がってる」
「でも・・・でも!俺は、saiなんて知らない!」
ヒカルはアキラの手を振り払った。
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