平安幻想異聞録-異聞-<水恋鳥> 4
(4)
最初、吐息に混じる破裂音でしかなかったそれは、徐々にはっきりとした喘ぎ声に
変わって行った。
「んぁ…、ぁ、……ぁ、……ぁ…」
うっすらと開いたまぶたの奥で、ヒカルが更に体の深くに届く愛撫を求めているのが
わかったが、今日は……。
佐為はヒカルのその要求に気付かないふりをした。
目を合わせず、その耳元に口を寄せ、ひそやかに名前を呼びかける。
「ヒカル」
とたんにヒカルの体がしなって、耳の先までが赤く染まった。佐為はその耳の
穴の奥に舌を差し入れてくすぐれば、ヒカルの口から小さい笑い声のような
嬌声が漏れた。
耳への愛撫は止めずに、佐為はヒカルの体を抱きしめた両腕で、ヒカルが悦ぶ
ように、その肢体をそっとまさぐり始めた。
ヒカルは激しい荒い愛撫より、触れるか触れないか程の優しい愛撫に弱い。
まだ単衣の布越しの前戯のさらに前戯だというのに、佐為の手管に感じて、肌を
粟立てているのが、直接触れ合っている足の感触でわかる。
佐為は着物越しに、もうすっかり立ち上がっているヒカルの中心を、布ごと
手で押し包んで、撫でさすった。
「佐為ぃぃ……」
甘えて自分を呼ぶその声に、佐為は手早く指貫の腰帯をほどくと、腕を単衣の
すそから忍び込ませて、ヒカルの太ももと太ももの間に挟み入れた。
そこは体温がこもって、燃え立つように熱くなっている。佐為の手の冷たさに、
ヒカルが内股の筋肉をきつく引き絞ったが、その閉じて合わされた膝の間から
多少強引に指先を割り込ませ、熱い両ももの間を通り、ふぐりの後ろあたりに
触れた。後ろの口とふぐりの間の柔らかい皮膚を、指先で圧しながら往復すれば、
ヒカルの、佐為の腕を挟んだままの両足がプルプルと触るえて、上の口からは長い
吐息が漏れた。
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