ピングー 4
(4)
ヒカルが身をよじると、ますます強い力で抱き込まれて、わがままな大人の手が、シャツの
下に進入をはたし、へそのまわりを撫で回しはじめる。
「先生、何してんの?!」
驚いたヒカルが、その腕から逃げ出そうとすると、それ以上の力で強引に引っ張られて、
気がつけば、ふかふかのベッドの中に投げ込まれていた。
肩幅のある、大人の男の体が、ヒカルの上にのしかかって、影を落とす。
(いやだ)
怯えにも似た、本能的な恐怖にヒカルは緒方の体を突き飛ばそうと腕を伸ばしたが、
それもあっというまに、より筋肉質な男の腕に押さえ込まれて、ベッドに沈んだ。
「こんな日は、祝いもかねて女を抱くんだがな。今日はあいにく女がいないんだ」
自分勝手な大人は、ヒカルの目を見ながら眼鏡をとって、ベッドサイドに置いた。
色素の薄い、魚みたいな表情のない瞳が、ヒカルを見下ろしていた。
ヒカルの目の端に、眼鏡とともにベッドサイドに置かれた灰皿が目に入った。
その灰皿の中にある、女のものと思われる口紅のついた煙草の吸い殻が、やけに
生々しかった。
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