りぼん 4


(4)
「今からどっかに遊びに行かないか? ついでにプレゼントも選べよ」
オレがそう言うと、塔矢はすぐに首を横に振ってその提案を却下した。
「碁を打って、そのあとキミが家に来てくれることがボクにとって最高の贈り物だ」
「そんなんでいいのかよ。いつもしてることだぜ?」
ほんの少し塔矢はイラついたみたいだ。前髪を荒々しくかきあげてる。
「ボクがいいって言ってるんだ。キミはものわかりが悪いな」
「そんな言い方ないだろ! 人がせっかく特別なことしようって言ってんのに!」
塔矢はわざとらしく長いためいきを吐いて、紅茶を飲んだ。
「何だよ!」
「両親がまた中国に行ってるから、家に帰ったらボクは一人だ。寂しいなと思ってね」
まるで捨てられるかのような目でオレを見るなよ。
「明日は日曜日だし、お互い仕事も入ってないから、大丈夫だよ」
大丈夫って何がだよ……。呆れて言葉も出ないぜ。
オレが黙ってると、塔矢が急に声のトーンを落として言った。
「……きみと付き合ってから初めてむかえる誕生日なんだ。だから一緒に過ごしてくれても
いいじゃないか」
――――今の一言はかなり、キタ。
そうだ、去年の今頃は、オレは和谷と一緒にいたんだ。まだ塔矢とはそういう関係になって
なかったから、コイツのことなんか少しも考えていなかった。
オレはいつに何があったかなんてあんまり気にしないけど、コイツは違うもんな。
ずっと覚えてるんだ。覚えてるぶん、つらいのかもしれない。
しょうがない。
コイツがいいって言うなら、(いつもやってるような気もするけど)オレをやるか。
「あのさ、塔矢……っと!」
いっけね! 碁笥に手がぶつかっちゃった。こんな机の隅に置くんじゃなかった。
あーあ、石が床に散らばっていくよ。
塔矢がすばやく立ち上がって、石を広げたハンカチに乗せていく。
「悪い、オレが拾うから」
慌ててしゃがんだオレの腕を、塔矢がいきなり引っ張った。



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