少年サイダー、夏カシム 4
(4)
「なあ和谷、これ飲みたくねェ?」
自販機にある夏季限定発売の炭酸飲料『少年サイダー』の広告ステッカーを指差
し、ヒカルはつぶらな瞳をらんらんと輝かせた。
「“少年時代に飲んだ、あの懐かしい味を”だって。オレ、小学生の頃は夏祭り
とか行くと必ずラムネ飲んでたんだよな〜」
「そういや進藤って、夏になると炭酸よく飲んでるよな」
「やっぱ夏は炭酸飲んでスカッとしてェし。それにさ、ハワイアンスプラッシュ
とか、オレの好きな炭酸飲料って夏限定が多いからさ。あぁ〜あ、ガブ飲みしてェ。
早く夏になんねーかな」
それは会社帰りの疲れたサラリーマンがビールを飲みたいと言っているのと同
じ感覚なのだろうか。ちょっと親父くさいと思いつつも、炭酸飲料の発売を楽しみ
に待つという子どもっぽさに、和谷は笑った。
「なんだよ」
ヒカルは笑われたことにムスッと頬をふくらませた。和谷はまた笑い、くしゃっ
とヒカルの頭を撫でる。
「なんだよ、子供扱いすんなよ」
ヒカルはむきになって和谷の手をどけようとする。そういうことするから子供っ
ぽいんだよと言うと、和谷はまた笑った。
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