初めての体験 Asid 4


(4)
 昨日のことで落ち込んでいるのに、よりにもよって、棋院であいつに会ってしまった。
なんて言ったっけ?和谷?彼はいつもボクを敵視している。今日も、思い切り睨みつけられた。
睨みたいのはこっちの方だ。いつも、いつも、進藤に馴れ馴れしくして!
 ああ!ムカムカする!ボクは彼に何もしていないのに、何であんな風に嫌われなければ
いけないんだ!?ただでさえ、今日は機嫌が悪いんだ!

 「キミは、何だっていつもボクを睨み付けるんだ?
  ボクが何か気に障ることでもしたのか?」
ボクは、棋院の屋上に彼を呼びだし、激しく詰問した。彼は、何も答えず目を逸らした。
自分でも後ろめたいらしい。そうだろう。だいたい、ボクは悪くない。一方的に嫌われて、
文句の一つも言いたくなって当たり前だ!ボクは、和谷を睨んだ。
 ……だが、こうしてじっくり見てみると、和谷は進藤とどことなく似ている。外見の
話ではない。雰囲気とかが、かぶるのだ。ボクはちょっと考えた。ふうん…これは……
ちょうどいいかもしれない。
 ボクは、俯いている和谷を、いきなり力任せに引きずり倒した。そして、鞄の中から
手錠をとりだし、素早く彼を後ろ手にしてそれをかけた。



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