やりすぎ☆若゙キンマン〜ヒカルたん癒し系〜 4
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「おかしいですね」
碁会所の前で佐為はそわそわしながら若゙キンマンの帰りを待っていた。
いつもならこの時間は夕食を終えて団欒する頃だった。
「なァ、佐為まだ? オレもう腹が減りすぎて死にそうなんだけど」
夕食を待ちきれないヒカルたんは佐為の袖を引っ張った。
「ダメです。絶対食べちゃダメ。いいですか、皆がそろうまで夕食は無しです」
きっぱりという佐為にヒカルたんはふてくされた。
「ヒカルたん、本当にどうしたんですか? 若゙キンマンが帰ってこないのですよ? 心配
ではないのですか?」
ヒカルたんの行動を信じられない佐為は、ヒカルたんに詰め寄った。しかしヒカルたんの
口からは信じられない言葉が出た。
「だから何なんだよ。若゙キンマンって誰だよ。そんなヤツどうでもいいじゃん」
パシッと乾いた音が響く。ヒカルたんは叩かれた頬を押さえ、佐為を睨んだ。
「痛ッ。何すんだよ!!」
「見損ないました。私の知っているヒカルたんは誰よりも優しくて心のきれいな子だと思
っていました。だからこそあなたにこの町の安全を任せたのです。それなのに、どうして
そんな残酷なことが平気でできるんですか? 仮にもあなたたちは愛し合っていた仲では
なかったのですか?」
涙ながらに追及されたヒカルたんはそれでも食い下がった。
「佐為の方こそ訳わかんないこといってんじゃねーよ! だいたいオレがなんで見ず知ら
ずのヤツと付き合わなきゃならないんだよ。いったい誰なんだよ若゙キンマンって」
ヒカルたんの言葉に佐為は異変を感じた。どう見てもヒカルたんが嘘を言っているように
は思えなかったからだ。しかし何故なのか理解できない。
「とにかく若゙キンマンが帰って来るまで夕飯はお預けです。どうしても食べたいと言うの
なら、若゙キンマンを探しに行きなさい」
そう言われたヒカルたんは食欲には勝てず、渋々と探しに飛び立った。
その姿を不安そうに見送ると、佐為は碁会所へ戻ろうとした。ドア越しに何かもの言い
たげにトーマスが立っているのが見える。だが、佐為と目が合うと逃げてしまった。
佐為はため息をついてヒカルたんの向かっている方向を見つめた。
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