夜風にのせて 〜惜別〜 4
(4)
四
「このマフラー、ひかるさんの手作りですか?」
「手作りってすぐわかってしまいます? …私不器用でうまく編めないんですよね」
ひかるは恥ずかしそうに俯いた。
「あの、よかったらこのマフラー頂けませんか」
「ええっ? ダメです、こんな汚いの。きちんと新しく作りますから。だからこれは…」
必死に断ろうとしたが、真剣なまなざしで見つめる明と目が合い、動けなくなった。
「いえ、これがいいです。ひかるさんがずっとしていたこのマフラーが欲しいんです」
その真剣さにひかるは仕方なく頷いた。
「本当ですか? うれしい。あ、でもひかるさんのマフラー無くなってしまいますよね」
「いいんです。また作ればいいですし」
「それでは申し訳ないです。あの…交換ということで、ボクのマフラーを差し上げます。
あ、でも男が使っていたものなんて嫌ですよね」
「そんなことありません! 私も明さんが身につけていた物が欲しいです!」
突然の大声に明は目を見開いて驚いた。
「あ、ごめんなさい。私ったら」
ひかるは顔を赤らめた。それを明は微笑ましく見つめる。
「わかりました。約束しましょう」
明はそう言うと小指をたてた。ひかるはおそるおそる明の指に触れる。
二人は指きりげんまんをすると別れた。
それぞれを待つ現実の世界へと…。
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