祭の後・又はプチの恩返し 4 - 5
(4)
「オレやるよ!アキラたんのためならなんだってできるさ!」
「なんだと!?アキラたんに良いとこ見せようとしやがって…オレが行くんだよ!!」
「何言ってやがるんだ、アキラたんのための勇者と言えばオレだろう!?」
「兄貴、兄貴のためだったらオレ、身体はれるぜ!」
「ああん、兄貴ってばカッコよすぎるぅ!あたし、もおダメェ…ハァハァハァハァ
ね、ね、あたしじゃダメかしら?大丈夫よねっ、こんなに可愛いあたしだもん、魔境の
人達だってきっと喜んでくれるわっ!そうよ、ヒカルたんなんか目じゃないわ、プチでも
魔境でも本当のアイドルはあたしなのよっ!」
「し、茂人は止めといた方が良いんじゃないかなあ…オレが勇者になるからさ、」
「なによっ!アタシじゃアイドルになれないって言うのっ!?ひどい、ひどいわ!
あぁあん、兄貴ぃい、住人Aたんが茂人をいぢめるのよぉ…ひどいわ、ひどいわぁ…!」
「じゃ、真の勇者はオレって事で。」
住人の一人がヒカルたんマスクに手を伸ばし、それを頭に被ろうとした。
「あっ、テメェ、一人だけアキラたんの前でカッコイイとこ見せようとしやがって、よこせよ、それ!」
「なんだよ、おまえ、さっきは泣いて嫌がってたくせに!」
「だいたいおまえみたいなヤツがヒカルたんマスクを被ろうなんて図々しいんだよ!」
「図々しい?そんな単語はおまえに返してやるよ!」
先程とは逆にヒカルたんマスクの奪い合いに、スレ内は騒然となった。
(まったく、場の雰囲気に流されやすいヤツらである。)
(5)
住人の一人が頭に被ろうとしていたヒカルたんマスクに、もう一人の住人が手を伸ばした。
奪われまいと被りかけたマスクを両手で抑える。だがもう一人はそれにも構わずマスクを
引っ張った、その瞬間、ピッ、と嫌な感触が手に走って、二人は顔を見合わせた。
その隙を突いて、別の住人がマスクに手を伸ばして奪い取ろうとした。
「あ、」「バカ、やめろっ!!」
声をあげた時には遅かった。
「あぁっ、」 「あああああああああああ………………」
「…テメエら…なんて事しやがるんだ……!」
その様子を見ていたマスク製作者が顔面蒼白となってよろよろと歩み寄った。
そして呆然としている3人の手からヒカルたんマスクの残骸を奪い取った。
「オレが、オレが丹精こめてつくったヒカルたんマスク…
ヒカルたんの愛らしいお口が…大きなお目目が…ぷにぷにのほっぺが…
ああ、ヒカルたん、オレのヒカルたんが…」
マスク製作者は目に涙をいっぱいに溜めてマスクのなれの果てを握り締めた。
涙がぽとりとマスクに落ちた。製作者の涙はヒカルたんの大きな愛らしい瞳のところに
落ちて、まるでヒカルたんが泣いているように見えた。
「…畜生、こんなスレに関わったオレがバカだった。
お前らなんて…お前らなんて、ずっと荒らされてれば良いんだ…!」
製作者の涙は後から後からぽろぽろとこぼれ落ちた。
「ゴメン、ゴメンよ…」
「そんなつもりじゃなかったんだ…許してくれよ…」
とり返しのつかない事をしてしまった。そんな重く苦しい空気が漂って、プチ住人達は
黙りこくってしまった。すすり泣く住人もいた。
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