pocket-sized Xmas 4 - 5


(4)
「――まだ妄想の中のボクを探してるんですか?そんなに妄想と現実の区別が
つかなくなるくらい、ボクを好きでいてくれるなんて嬉しいです」
「アキラたん・・・」
アキラたんは白い指を伸ばして俺の頬をそっと撫でた。
それで初めて、自分の顔が涙でぐちゃぐちゃになってることに気がついた。
「あなたにこんなに好かれてるなんて、妄想の中のボクがちょっと羨ましいな。
でも今日からは、このボク一人を見てください」
「あ、アキラたん」
「あなたを泣かせるような妄想なんて、ボクが忘れさせてあげます・・・」
そう言うとアキラたんは身に纏っていた毛布をはらりと落とし、
俺の首にゆっくりと手を回した。
「ア・・・アキラたんっ。ちょっと待った!たんま!たんまっ!」
焦ってもがいて逃れようとする俺に足払いを食わせてあっさりと布団の上に引き倒し、
目の縁をほんのり赤く染めて恥ずかしそうに息を乱しながらアキラたんは囁いた。
「大丈夫です、・・・ボクに任せて・・・?」
語尾を上げてかすれさせながら、ね?というようにちょっと首を傾げてみせる。
慰めるようにあやすように、誘惑するように。
それだけでもう俺の理性は飛びそうになる。
顔にかかる甘い吐息。
ちゃんとした重みのある温かな体。
俺だけを見て輝いてる潤んだネコ目。

ああだけどあの子がいないなら、
俺の心臓はあの子のあんなにも小さかった温もりを思い続けて、
一生癒えることはないんだ。


(5)
「アキラたん・・・!アキラたああああああん!!!」
「・・・はよう、ぼくムーミン!いいかい、三つ数えるうちに起きるんだよ。
いーち、にーぃ、さんっ。起きろ!」
ジリリリリリリリリリリリ
・・・はっ。
頬の上を流れ落ちて行く涙。
喧しく鳴り響くムーミンのアラーム。

バッと枕元に目を遣ると、昨夜置いた片っぽだけの紺色の冬用靴下があった。
その中に、小さな膨らみ。
アラームを黙らせて、恐る恐るその膨らみを指で撫でてみる。
「アキラたん?」
「ん・・・」
膨らみが微かに動く。アキラたんの声だ。
心底ホッとして涙と鼻水をティッシュで拭い、靴下ごと手に取って中を覗き込む。
「アキラたん・・・朝だよ。メリークリスマス!」
「あ・・・おはようございます・・・」
目をこすりながら、寝袋みたいに俺の靴下の中で寝ていたアキラたんが
モソモソ這い出してきた。
俺の掛け布団の上にぽふっとダイブして、それから自分の体と、
今まで自分が入っていた靴下と、俺とを何度も見比べている。
「英治さん、今日ってクリスマスですよね・・・」
「うん、そうだよ」
「・・・そうですよね・・・」
アキラたんはふうーっとアキラたんにしては精一杯大きな溜め息をついて、
力が抜けたようにくてっと転がった。
それから少し目を閉じて、暫くしてから開いて、やっといつもの笑顔を見せてくれた。
「英治さん。・・・おはようございます」
俺も笑顔を返して、おはよう、と言った。



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