禁断の章 4 - 7
(4)
対局が終わった夕方の刻。
棋院のトイレにボクは進藤を連れていった。
個室に入る。
幸いその場所に誰一人としていなかった。
進藤のジーンズを下着と一緒にずり降ろす。
進藤は嫌がったが、そんなことおかまいもせずボクは進藤のアレを
口に含んだ。進藤はキタナイからやめろとボクの頭を押した。
自分でも不思議だった・・。
以前のボクなら男の性器を触るのもましてや口に含むなんて出来なかったろう。
自分はまともだ。男と男が関係するなんて嫌悪の対象でしかない。
そう思っていたのに・・・。
棋院で数人の男が、性的な艶話に華を咲かせていた。
誰がいいかという話になった時、女の名前の他に進藤ヒカルという
名が挙がったことを思い出した。
進藤は限界を迎えていた。もうすでにかたちを変え亀頭は頭をもたげ
液を垂らしていた。
ここぞとばかりボクは吸った。進藤はボクの頭を押さえながらズルっと
震えた後、ボクの口に射精した。
進藤がボクを見ている。
ボクは進藤の見ている目の前で進藤が放ったあれを飲み込んだ。
進藤がたまらず目を背ける。
「進藤・・・気持良かった?」
(5)
「進藤!」
和谷はヒカルを見つけ駆け寄った。
ここ最近進藤の様子がおかしい。明るい奴なのに何故か沈みがちで無理して
俺達に話を合わせ一人の時は、深刻に思い詰めた顔をしている。
塔矢と何かあったかと思ったが、塔矢と進藤をみると
塔矢が原因ではないらしい。
変といえば、頻繁に進藤の側に越智を見かけたことだ。
あいつらいつの間に仲良くなったんだ?
ヒカルの親友を自負する和谷は、ヒカルと越智の接点が見つけられず
はてなマークでその光景に目を見張った。
「まあ、碁に影響がないとこみるとあまりたいしたことはないだろう」
以前のヒカルは、突然碁を打たないと宣言し手合いを休んだ。
なにが原因でそうなったか和谷は結局ヒカルから話を聞くことはなく、
和谷も訊かなかった。
解決はしたが進藤のあの様子はただごとではなかった。
ヒカルが立ち直ってくれて嬉しかった。
でも本当は何があったか話してほしかった。だって水くさいじゃないか。
オレ達 親友だぜ!?
だからまた何か悩みがあるんだとしたらこんどこそ力になりたくて
オレは進藤に声をかけた。
(6)
「銭湯無料券」
和谷はヒカルに1枚、券を渡した。
隣のおばさんにもらったと母親がオレにくれたのだ。
ヒカルはそれに目を落とし和谷の顔を再びのぞき見た。
「これからいかねえか?今日つかれたろ一緒に汗流そうぜ」
ヒカルは一瞬考え込んだが、いいぜと了解し和谷の後に続いた。
オレと進藤は脱衣所に入り服を脱ぎ始めた。
オレ達の他に中年のおっさんが2・3人いる。
オレ銭湯なんて久しぶりだよと進藤は笑った。
進藤は塔矢との対局であった出来事に話を弾ませてた。
誘って良かったなと和谷は思った。
進藤の話にオレも一緒に笑っていたが後ろで視線を感じるので
ちょっと目を泳がせた。
40代後半の男が進藤の後ろ姿をみて、一緒にいる奴に耳打ちする光景が
目に入った。
進藤はトランクスに手をかけ下ろしている最中だった。
進藤の腰のラインに一瞬見惚れた。肩から腰にかけてなんてきれいな
カーブなんだろ。ウエスト細いな尻のかたちもいいし。
そこまで考えてはっとする。男相手になにいってんだ。
進藤は”和谷遅い、早く入ろうぜ”と促した。
(7)
身体を洗うのもそこそこにオレ達は湯船に身を沈めた。
進藤は上機嫌だった。
オレは進藤のその様子に安堵し本来の目的である話を切りだした。
「え・・・オレそんなに変だった?」
進藤は男の割に大きい目を見開いて和谷を凝視した。
「ああ、かなり・・みんな心配してたぜ。また落ち込んでそのうち
碁が打てなくなるんじゃないかって」
進藤は苦笑いで「オレ、前科者だしな」といった。
「だから悩みがあるんだったら話してほしいんだ」
いつになく真剣な目で進藤を見た。
進藤はびっくりしてたが、かすかにほほえんでありがとうといった。
和谷は絶句した。
かわいかった。一瞬抱きしめたい衝動にかられた。
いけないいけない和谷はなんとか煩悩をふりはらった。
「心配してもらうほどでもないんだ」ははっと進藤は困ったように
言った。「オレには言えない?」オレは引き下がらない。
こんどこそ力になるんだ。
和谷の気迫に押されたのかヒカルは一瞬口をつぐんだが、和谷の方に
向き直り笑いながら「実は期末がひどくて補習受けなきゃいけないんだ」
と困ったように言った。
「へ?」和谷はぽか〜んとする。絶対深刻な話だと決めつけていたが
そんなことだったとは。確かに進藤は成績悪いが普段気にしない奴なので
だいたいの学生が抱える成績が悪くて悩むとは到底考えつかなかった。
進藤はオレが笑ったのを見て”笑い事じゃない卒業させてやらないって
言われたんだぞ。”とふくれっ面をした。
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