初めての体験+Aside 40
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昼食は昨日の残りのカレーだった。カレーは二日目が美味いのだ。和やかに食卓を囲む。
ヒカルは色々なことを一人で喋り続けている。北斗杯のことや、家族のこと、友人のこと…。
くるくるとよく変わる表情は、見ていて飽きない。
アキラも楽しそうにヒカルを見つめていた。ヒカルの罪のないおしゃべりに、音楽でも
聞いているかのように、うっとりと聞き惚れている。まるで一枚の絵のようだ。
『塔矢もこうやって見ている分にはええんやけど…中身は悪魔やからな…』
やっぱり、自分は天使がいい。ところが、その天使がとんでも無いことを口にした。
「なあ、社。この家…実は、座敷牢があるんだぜ。」
カレーを吹き出しそうになった。確かにこの古い家ならあるかもしれない。社は、まじまじと
ヒカルを見つめた。
「なーんて、ウソ!本気にした?」
クスクスと笑って、顔を覗き込んでくる。ビックリした。ウソなのか…。
「あるわけないじゃん!な、塔矢!」
ヒカルはアキラへ笑顔を向けた。その時、一瞬アキラから表情が消えた。だが、すぐに、
「…………………………………………………………当たり前じゃないか…ハハハ…」
と、ニッコリ微笑んだ。それから「進藤は冗談が好きだな」そう言って、ヒカルの額をつついた。
―――――な、な、な、な、なんや!?今の間は!!!!!!
真実を問いたいという好奇心と、それに触れてはならないという警告が鬩ぎ合う。
北斗杯を前に、すでに疲労困憊の社だった。ヒカルの笑顔というエネルギー源がなければ
とっくにドロップアウトをしているだろう。ヒカルで潤い、アキラで枯れる。緑の森が
砂漠化していくような感じだ。
―――――オレ…生きて帰れるんやろか……
ものすごく、不安になった。
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