落日 40 - 42


(40)
醜い男の、異臭を放つ醜い一物が眼前に突きつけられる。顎をとらえられて、無理矢理口の中に
それを捩じ込まれた。饐えた臭気に吐き気がこみ上げる。けれど男はそれを許さず、ヒカルの髪を
鷲掴みにして揺さぶる。後ろは別の男のモノに穿たれ、腰を掴まれて揺すぶられる。
前後から責めたてられて、苦しいのに、苦しいはずなのに。
心のどこかが麻痺してしまったようで、もはやそれを嫌だとさえ感じない。
「早く代われよ、今度は俺の番だぜ。」
「待てよ、あと、うっ、くうっ…!」
後ろからヒカルを抱え込んでいた男が急かされて更に激しく腰を動かす。
「ちっ、それじゃ俺はこっちにするぜ。」
また、顎を掴まれて、口の中に押し込められる。反射的に咳き込みそうになった瞬間、後ろから
体内にまた熱い精が注ぎ込まれるのを感じた。
ヒカルの腰を抱えて余韻に酔っていた男は、別の男に強引に引き剥がされ、ずるりと彼が体内
から抜け出るのを感じたと思ったら、次には別の熱く猛り狂う男が押し入ってきた。
「あああっ!」
思わずヒカルの口から悲鳴が漏れる。けれど男はヒカルの様子になど躊躇せず、強引に自身
を捩じ込む。
「す、すげぇ、いい…」


(41)
いつまでこの責め苦が続くのだろう。
男共の何か言い争う声もヒカルの耳には入っていなかった。
がくり、と、ヒカルの頭を捕らえていた男が急に崩れ落ち、支えを失ったヒカルは地面に倒れこ
みそうになる。が、ヒカルの腰を掴んだ手がそれを許さない。
生臭い匂いがむっと立ち込める。何とか手をついて顔を上げると、つい先程までヒカルの口内
を犯していた男の背中が目に入った。
その背がぱっくりと割れて赤い血を流しているのが、闇の中にかろうじて見えた。
同時にヒカルの腰を掴んでいた男もそれに気付き、動きを止める。
「なっ…貴様、何を…」
頭上で刃がきらめくのが目に入るのと、ヒカルの腰を掴んでいた手が離れるのとはほぼ同時
だった。
「ああ…っ…!」
支えを失ってヒカルの身体は今度こそ地面にくず折れた。


(42)
どさり、と重たい身体がヒカルの上に倒れこんできて、ヒカルは呻き声を上げる。
「貴…様、こんな事をしてただで済むと……」
呻き声と共に切れ切れに呪詛の言葉が漏れるのが聞こえる。が、そのような言葉など耳にもい
れず、他の男共を切り倒した血まみれの手がヒカルの髪を掴み、男の身体の下からヒカルを引
きずり出そうとしている。既に朦朧とした意識のヒカルは悲鳴さえ上げられずに、男の手に従うし
かない。
更に彼はヒカルに覆い被さる男を足蹴にして倒し、ヒカルの身体を引き寄せ仰向けにかえすと、
下肢を割り開き、既に怒張しきった己自身をヒカルに勢いよく押し込んだ。
嗄れきったヒカルの喉からまた、掠れた悲鳴が上がり、背が弓なりに反る。が、既に何度も男達
の精を受け入れたヒカルの内部は、強引なその動きを難なく受け入れた。
男は目を閉じ小さく身体を震わせて極上の感覚を味わう。そして、熱く蠢きながら己を締め付け
るその感覚に小さな呻き声を上げた後、男は狂ったように腰を動かし始めた。
もはや意識も切れ切れに、ただ己の内部から与えられる感覚だけがヒカルを支配する。それは
もはや快感を通り越し、苦痛にも近いものであったが、ヒカルの肉体はその感覚から逃げ出す
事はできなかった。
せめて気を失ってしまいたい。意識だけでもここから逃げ出してしまいたい。そんな思いに気が
遠くなりかけていた、その時、恐ろしい悲鳴と共に突如男の動きが止まり、ヒカルの腰を掴んで
いた手に恐ろしいほどの力がこめられた。骨を砕くようなその痛みにヒカルは一瞬、己を取り戻
す。次の瞬間、男の身体はくず折れ、どさりと音をたててヒカルの上に落下した。
どろりと生暖かい液体が、ヒカルを更に汚すように伝い落ちるのを感じながら、ヒカルはようやく
意識を手放した。



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