無題 第2部 41
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そうしてまた日常が戻ってくる。
ボクの生活にまた新しい要素が一つ加わっただけだ。
時々、あの人の部屋に行って、セックスして帰ってくる。それだけだ。
それなのに、それでも、ボクの胸の中には、何かが欠けたようにぽっかりと空白の部分が
あるような気がする。でも、何が足りないんだかはわからない。
あの人とのセックスはボクには十分に満足できるものだったし、(彼がボクに満足している
のかはわからないけど)、抱き合って、一つに繋がっている時は、もうこれ以上の充足感は
ないという気になる。ボクはあの瞬間が好きだ。あの人がボクを呼ぶ声が好きだ。
「アキラ…愛してる」
そう言われるのは嬉しい。時々、泣きそうになるくらい、嬉しい。
でも、それだけじゃ足らないものが、なにか、あるんだ。
そんな時に、ボクは彼にしがみついて、せがんでしまう。
もっと、もっと、強い刺激を。
ボクを呑み込んでどこかにさらっていってしまうような、もっと激しい、強い、なにかを。
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