白と黒の宴2 41


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翌日、駅前の碁会所の前でヒカルと出会った。
時棋院会館での一件もあってアキラの方に相当な気まずさがあった。
ヒカルも最初ムスッとしてアキラを睨んで来た。
「…心配したんだぜ、オレ。また何かあったのかなって思って…。」
「ごめん…」
消え入るような声で、アキラは謝った。何をどう聞かれても自分は答えることは出来ない。
だが直ぐにヒカルはいつもの笑顔になった。
「まあいいや。それより、早く打とーぜ。オレ、ずっと待っていたんだからな。
塔矢と一緒にまた碁の勉強するのを。」
そう言って碁会所のあるビルの中のエレベータに向かうヒカルの背中をアキラは眩しそうに見つめる。
ヒカルとは、こうして碁盤を挟み、碁を打つ瞬間が全てなのだ。
今はまだ、それだけでいい。それ以上のものは望まない。
ただふと、アキラは考える。ヒカルもいつか、誰かに対し、身を内から焼く炎を抱えるように
なるのだろうか。その誰かがもしも、自分以外の者であった時に自分は耐えられるだろうか。
フッと笑みを漏らして首を振り、小さく呟く。
「…そんな事には、させない…。」
エレベーターの中からヒカルが大声で呼ぶ。
「何してんだよ、塔矢!早く来いよ!」
「今いくよ。」
二人を乗せたエレベーターはアキラの願いのように静かにその扉を閉じた。 〈白と黒の宴2・終〉



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