金魚(仮)(痴漢電車 別バージョン) 41
(41)
「もう一度だけ訊いておくよ。」
笑いを納めて、真剣な顔を作ると、ヒカルも同じように神妙な顔つきになった。
「本当に、酔っていないんだね?」
「しつこいな…酔ってネエってば!」
「あとで酔っていたから、無効だなんて言わないね?」
「くどいぞ!」
プーッと頬をふくらませるヒカルにアキラは手を伸ばす。まず、髪に触れた。さらさらとした感触。
それから、額から頬へと指を滑らせた。さっきと同じように、最初は指先だけで…それから
両手で包み込むようにしっかりと撫でた。
ヒカルはその間動かなかった。時折、ヒカルがアキラをまねて手を伸ばし掛けていたが、
自分に触れる直前で戸惑ったように手を下ろしてしまう。
暫く惑いながら彷徨っていた手が、意を決したようにアキラの項に触れ、引き寄せられた。
それを合図に、ヒカルの頬に触れていたアキラの指先がセーラー服のカラーを滑り、スカーフを
抜き取った。水のように淀みないあまりに自然なその手の動きに、ヒカルは目を見開いて驚いていた。
シュッと軽い摩擦を服に与え、ヒカルの目の前を薄羽根のようなスカーフがふわりと舞った。
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