白と黒の宴4 41 - 45


(41)
「う…んっ!!…っ!」
社の躯の下で激しくアキラの躯が痙攣しビクビク震えていた。社は構わずアキラの根元を強く
握ったまま腰を動かし内壁を擦り上げる。
「は…っあ、う…っんんっ」
あまりの激しさにアキラはシーツを握って上半身を捩って逃れようとした。
「大人しくせんとイカせてやらんで…!」
そう社に言われるとアキラはビクリと怯えたような顔になり、起こしかけた身を再び
シーツの上に横たえ力を抜いた。
そんなアキラの動きがさらに社の本来の野獣のような本能に火をつけ、残酷なかたちで
アキラを嬲りものにさせていた。
飢えた囚人の口に極上の肉を含ませながら呑み込む事をさせない、ギリギリまで追い詰めながら
到達を許さない今のアキラにとってもっとも辛い拷問を与えた。
「ハア…あア…あー…」
ほとんど啜り泣くような切ない声を上げてアキラは首を振り自分の指を噛む。
「…イきたいか…?」
社が顔を近付けて問うと、アキラは汗で張り付いた前髪の合間で顔を立てに揺らす。
「そんなにイきたいか…可哀想やなア…」
冷たく笑うと社はアキラ自身を押さえた指を緩めないまま腰を動かす。
再び泣き声のようなうめき声が歪んだアキラの唇からもれる。
だが社もまた同じ苦痛を味わっていた。
大阪のホテルでの出来事のせいか、限界近くまで届きかけながらどうしても
最後の瞬間までたどり着けそうになかったのだ。


(42)
二度と手に入る事のない感触と諦めていただけにアキラの味はどこもかしこもこのうえなく
甘美だった。アキラの躯のあらゆる部分を指と舌で味わった。
そのことでアキラを責めたてる程度に硬さを維持してはいたがダメだった。
それがアキラにも伝わったのか、アキラが自ら腰を浮かして角度を整え、内圧をかけて来た。
何度も到達しかかったアキラの内部は柔らかく社を押し包み、吸い上げようと蠢く。
「よけいなことをするな…!」
社がアキラの髪を掴んで頭を激しく揺さぶった。
「今お前を支配しとるのはオレや…!」
そう自分に言い聞くかせなければ足下から一気に崩れそうだった。
アキラを抱いているのではなく、抱かせられているのだ。
欲情も快楽も全てアキラの手の平の上で与えられているようなものだった。
そんなアキラにもどうにも意のままに出来ぬ相手がいた。
それが進藤ヒカルだったわけだ。
自分と同い年のそのヒカルに、社はどうしようもない嫉妬を今は隠せないでいた。
今程敗北感を感じた事はなかった。
だが、アキラはヒカルを手に入れたのではなかったのか。合宿のあの朝、社は直感的に
そう感じた。それなのに何故アキラに余裕がないのだろう。
何にこんなに飢えているのだろう。そして社はハッとなった。
「お前…進藤と寝た時、イけんかったちゃうか…?」
言って良い事かどうか一瞬迷ったが社はそれを言葉にした。


(43)
それまで人形のように天井を見つめていただけだったアキラの表情が一変した。
前触れもなしに投げかけられた問いに驚いたように目を見開き、社を見上げて離れようと身を
起こそうとした。社が慌てて力を込めてアキラを組み付した。
直ぐにアキラは顔を横に向けて社から視線を逸らすと悔しそうに唇を噛む。
ひどく動揺したその様子だけで十分答えになっていた。
「…オレには関係なかったな、悪い…」
見る見るアキラの体が冷えて強張っていくのを社は感じ、まずいと思った。
(…そおいうことやったんか…)

社の指摘は、図星だった。
合宿の最初の夜、アキラは初めてヒカルと深く繋がる事が出来た。
その時はそれだけでもう十分だった。
自分がいきつく事だけに夢中になっているヒカルが初々しくて、愛おしかった。
自分の中でヒカルが弾ける瞬間の、ヒカルの甘く呻く声を聞けたのが嬉しかった。
いろんな意味で完全にこれ以上なくヒカルと結びつく事が出来たのだと思った。
そんな一方で肉体的には満足出来ないでいる自分が居た。
安らぎと安心感を得る事は出来たが、物理的な快楽には程遠かった。
碁を打ち合った時の脳が溶けるようなあの感覚、あれ以上のものを密かに期待していた
自分がいた。そしてそれをヒカルにぶつける事ができず、こうして代替品で埋め合わせを
得ようとしている自分がいる。


(44)
「…やめて…」
今度は消え入りそうな弱々しい声で、アキラは社に乞いた。この上なく自分が浅ましく思え、
それが社に見透かされたのが耐えられなかった。
「…お願い…もうやめて…社…」
だが社は体を離そうとしなかった。
「…どんなや」
「…え?」
「進藤のやり方を教えてくれ…あいつは…どんなふうにヤるんや」
組み敷かれたアキラが無言で社を見あげる。
「教えてくれ」
社の考えがわからなくて当然のようにアキラは戸惑い躊躇した。
再度腕を突っぱねて社の下から這い出ようともがくが、社に強く抑え込まれる。
ただ社の表情はさっきまでの野獣のような恐ろしいものとうって代わって穏やかだった。
「思い出してみ…、進藤はどんなやった…?」
締め付けるだけだった社の指がアキラ自身を軽く包み、擦りあげる動きになる。
アキラの内部でもゆっくりあやすように社の分身が抽出される。
「…あ…」
強張っていたアキラの体から力が抜け、途切れ途切れに答える。
「優しい…よ…進藤は…。可愛くて…仔犬みたいに…胸に吸い付いて離さなくて…」
すると社の唇がアキラの胸の突起に吸い付いてきた。


(45)
「あ…っ!」
ヒカルとの行為を思い浮かべていたアキラは、ふいにその時の感覚が蘇って声をあげる。
「それで…?もっと、どんなんや、言うてみい…」
「…だ…め…」
「何でや…言うてみ、同じように抱いてやる…今度はちゃんとイかしてやる…」
その条件がアキラの心を揺さぶったようだった。
「…進藤は…初めてで…、ぎこちなくて…」
誘導尋問にかかるようにアキラは社に伝える。
社の行為がアキラの言葉通りに変化し、ヒカルから受けたものに近付く。
「はあっ…ア、うんっ…!」
何度も制御されて幾分勢いをなくしかけていたアキラのモノが再び反り上がる。
「うああっ…」
ヒカルの事を思い浮かべながら社に抱かれる事は嫌だった。それでも自分の体は
どうしようもなく疼き反応してしまう。
「…オレを別の男と思おてええんや…」
その言葉に最後の鍵が外されるようにしてアキラの熱が渦巻き一気に外に向かう。
あの時はただ単にヒカルが性的な技術において未熟だからと思った。
だが、やはりヒカルの精神が全て自分に傾いているわけではないという隙間があった。
それが悔しかった。
自分が全てを注ぎ込むほどにはヒカルは自分には気持ちを重ねてくれていない。
2人の間にはまだ何か取り払われていない壁がある。
合宿の時点でヒカルの頭の中には高永夏への強いこだわりがあって、それによって
整理しきれないでいる感情をアキラに向けたという向きがあった。



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