初めての体験 41 - 45


(41)
 固まってしまったヒカルに嘉威が声をかけた。
「始めないんですか?」
ハッとヒカルは我に返り、慌てて碁石を手にとった。嘉威と俊彦の前にある盤に交互に
碁石を置いていく。子供といえどもヒカルはやはりプロ、嘉威達ではいくら石を置いても
太刀打ち出来ない。
 ヒカルが一手一手に解説をしていく。二人は、ふんふんと頷きながら真剣に聞いている。

「進藤プロ…オレ達…じいさんにやられっちゃったよ…」
指導碁が終わった後、突然、ぽつりと俊彦が呟いた。ヒカルはやっぱり…と思った。俊彦がどういう経緯で
桑原と関係したのかはわからないが、嘉威の方はだいたい見当がつく。
「オレ、あの時、あんたが何であんなに瞬きしているのかわからなかったけど…あれって
 教えてくれていたんだな…」
ありがとう…と、嘉威が小さく礼を言った。
「あんたも同じ目にあったんだ?」


(42)
 ヒカルは何と応えればいいのかわからなかった。素直に頷くのも躊躇われた。
碁笥を包むようにして持つ、両の手が微かに震える。そんなヒカルの心中を察して、
「いや…いいよ。返事が欲しいわけじゃないから…」
と、嘉威が言った。
ヒカルの愛らしい唇から安堵の息がもれた。嘉威と俊彦は、何故か胸がどきりとして、
そんな自分に狼狽えた。
 二人は改めて、ヒカルを見つめ直した。後ろの髪と違う、まるで、染めたように明るい前髪。
大きな瞳の周りに密集している睫毛。繊細な顎から華奢な首筋につながる曲線。
細い体躯にすんなり伸びた手足がついている。
明るさと暗さ、大胆さと繊細さが同居する不思議な魅力で、ヒカルは作り上げられているようだった。
 なるほど、これならあの老人でなくても手に入れたいと思うだろう――
いけない…!自分は大分あの老人に毒されているらしい。と、嘉威は思った。
 あの経験は嫌悪すべきものだった。それなのに、気がつけばあの時のことを思い出しながら、
自分を慰めている。たった一度きりのことなのに―――――。そして、この少年が自分と同じように
あの老人に汚されたのかを想像すると……嘉威は足をモゾモゾと動かした。

 ふと、横にいる俊彦と目があった。彼も同じことを考えていたらしい。目の辺りが赤く
なっている。自分たちのよこしまな考えを振り払うように、二人は同時に立ち上がった。
勢い良く引かれた椅子が、ガタン―と大きな音を立てた。
 驚いて、目を丸くしているヒカルに向かって手を差し出した。
「応援しています。これからも頑張ってください。」
「うん…ありがとう…」
ヒカルは順番に二人の手を握った。
手を振りながら去っていく二人を、ヒカルも同じように手を振って見送った。 


(43)
 「…桑原先生…か…」
ヒカルが小さく呟いた。
「呼んだかね?」
 ギョッとして振り返ったヒカルの目の前に、小柄な老人がイベントの主催者達と一緒に
立っていた。
「――――!」
ヒカルは悲鳴を上げたが、幸か不幸かそれは音としては伝わらなかった。口をパクパクさせて、
狼狽えるヒカルを桑原は面白そうに眺めた。
「ど…ど…して…ここに…」
ヒカルは、喘ぎながら何とかそれだけ言うことができた。
「なぁに――わしも年だから休養をかねて遊びに来たんじゃよ。このイベントにお前さんが
 来とるとは思わなかったがの――」
 ヒカルは、桑原のニヤニヤ笑いを睨み付けた。絶対にウソだと思った。この老人はヒカルが
ここに来ているのを知っていたのだ。この前みたいに、好きにされてたまるか―!
「何か用ですか?オレまだ仕事があるんですけど―」
ヒカルがつっけんどんに言った。声が僅かに震えていた。
 だが、ヒカルの精一杯の虚勢もこの老人には通用しない。
「お前さんの仕事はもう終わりじゃよ。」
「え…?」
ヒカルが、どういう事か問い質そうとしたとき、
「進藤君。桑原先生が君を食事に誘いたいと仰るんだよ。」
と、信じられない言葉が、耳に飛び込んできた。
「こんな機会は滅多にないよ。もうここはいいから、ご一緒させていただきなさい。
桑原先生のような方のお話を聞くだけでも勉強になるから、ね?」
スタッフが、まるで自分が誘われたかのように興奮してしゃべる。皆、口々にヒカルの幸運を
うらやむ言葉を紡いだ。それは、ヒカルにとっては、地獄からの託宣だったのだが…。
「ほれ、行くぞ。小僧。」
呆然と立ち尽くすヒカルの手を引っ張って、桑原は会場を後にした。


(44)
 タクシーに乗って連れて行かれたところは、あの時と同じような料亭だった。
見知らぬ土地で、しかも財布も持っていない。恐る恐る店の入り口をくぐった。
 前後を桑原と料亭の仲居達に挟まれ、逃げ出すことも出来ず、促されるままに廊下を歩く。
時折、桑原が後ろを振り返って、ヒカルを急かしたが、足がすくんで、うまく歩けない。
 通された部屋は前の時と同じような部屋だった。あの奥の間には、以前のように
床が延べられているのだろうか―――。怖い!

 カタカタと小さく震えるヒカルを見て、桑原は自分が高ぶっていくのを感じた。
「桑原先生…やめてください…オレ…」
ヒカルは泣きそうな声で訴えた。
「大丈夫じゃよ…お前さんが大人しくすれば、この前のように薬を使ったりはしないから…」
 老人の指がヒカルの項を撫で上げた。背筋に悪寒が走った。
「や…!」
ヒカルが老人を振り払って、逃げようとした。
 突然、奥の間の襖が開いた。中から男が二人飛び出して、ヒカルを押さえ付けた。
「!!…うそ…」
ヒカルは自分の目を疑った。それは、嘉威と俊彦だった。この二人が何故ここに…!

 「や…どうして…」
ヒカルは激しく首を振った。あらん限りの力を振り絞って暴れようとしたが、
両肩と両足を押さえ付ける力には敵わなかった。ゼエゼエと荒く息をつく
ヒカルのズボンに、老人が手をかけた。
「せんせい…!」
やめて――――と叫ぼうとしたが出来なかった。老人の指がヒカル自身を取り出し、
さすり上げたからだ。ヒカルは「ひっ」と小さく悲鳴を上げただけだった。


(45)
 桑原がゆっくりと手を上下にこすると、ヒカルの口から、鼻に抜けるような声が漏れた。
「はぁ…ふ…」
ヒカルの悶える様に気をよくした老人が、躊躇いもなくそれを口に含んだ。
「あぁ―や…やだ…」
ジュルジュルとすすり上げる音が部屋中に響いた。ヒカルは羞恥に喘いだ。
感じたくはないのに、快感がヒカルの体から力を奪っていく。それと同時に、
ヒカルの体を押さえる腕の力も、徐々に弛んでいった。
「やめて……!」
股間に神経が集中していたヒカルの体を、別の手が這い始めた。その手がヒカルの上着を
捲り上げ、乳首を嬲り始めた。
「あぁん…んん…やだ…」
指の腹で突起をつぶしたり、摘んだり、その度にヒカルの体がビクビクと跳ねる。
いつの間にか、ズボンも下着も取り払われていた。脇腹や内腿に手が這い、舌や指が
両方の乳首を弄んだ。ヒカルの体を好き勝手に弄る三人の手と舌に、ヒカルは翻弄された。
「…んあぁ…はぁん…あん…あん…ぁあ……」
ヒカルの唇からひっきりなしに嬌声が漏れる。与えられる快感に対抗する気力はもうなかった。
 桑原が顎をしゃくった。男達は小さく頷くと、ヒカルの腰の下に片腕を通した。そして、
もう片方の腕で、両側からヒカルの膝をすくい上げた。ヒカルは男二人に支えられ、
おむつを換えるように尻を高く上げられた。あまりにも恥ずかしいその格好に、ヒカルの体が
朱に染まる。すぐ側で、ごくりと唾を呑み込む音が聞こえた。

 「あ…は…あぅん…」
「薬がなくても、いいようじゃな…」
桑原が指でヒカルの後ろを嬲りながら、ヒカルの耳元で呟いた。
桑原の笑いを含んだその声にヒカルは泣きたくなった。涙に濡れた瞳で、ヒカルは
嘉威と俊彦を見つめた。『どうして―――?』と問いかける。
「ごめんよ…オレ達もおかしくなっちゃったんだよ…」
「さ…さいしょ…か…ら…?」
グルだったの―――?ハァハァと喘ぎながらヒカルは訊ねた。



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