初めての体験+Aside 41 - 45
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それから、十時間…。社は耐えた。眠りそうになると、そっと部屋を抜け出し、自らに
ビンタを張り、あるいは太股をつねって耐えに耐えた。だが、もうそれも効かない。
時計の針の進みが遅い。アキラが細工しているのではないかと思ったりもした。
もうアカン――――――社が意識を手放しかけたとき、アキラが漸く就寝を告げた。
『た…たすかった…』
社の思考はもう半分停止していた。アキラがヒカルを連れて、自分の部屋に戻っていったときも
「やっと、眠れる」という考えしかなかった。その時、ヒカルがアキラに何か言っていたが、
その内容は全然聞こえていなかった。おそらく、社のことを話していたのではないだろうか。
アキラはヒカルを宥めて、強引に自室に引っ張って行った。それをとがめる気力は、既に
社には残っていない。その時点で、社はアキラに負けてしまっていた。
社のヒカルへの思いは、睡魔の前に敗れ去った。悔しいという気持ちも湧いてこない。
ただ、ひたすら眠りたかった。
ドサッ―――――布団の上に倒れ込んだ。そのまま社の意識は途切れた。
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妙に胸が苦しくて、社は目を覚ました。ぼんやりとした視界の中に、秀麗な顔がある。
「……?と…や…?」
自分の発した言葉に、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
とうや?と、と、と、塔矢!なんでや―――――――――――――――――――!!!
身体を捻ろうとしたが自由が利かない。両腕を頭の上で固定され、縛られているようだ。
下半身も膝裏を何か棒ですくい上げられ、固定されている。自分の今の姿を思うだけで
顔から火が出そうだ。アキラは無言で、目の前で包帯を扱いた。そのまま社の目を塞ぐ。
「ちょ…塔矢…やめ…」
頭の中はパニックだ。ヒカルと一緒に眠っているんじゃなかったのか?どうして、ここに
いるんだ?
「…先に、目を塞いだ方がよかったな…やりにくい…」
頭を支えられたまま社は硬直した。何でもないことをやるように、独り言を呟くアキラが
不気味だ。
「うん…これでいい…ボクは社は包帯と決めているんだ…」
満足そうに笑う。
『ちょお、待てや〜包帯と決めているってどういうこっちゃ…』
他にもいるのか?縄係とか、手錠係とか…?怖すぎる。泣きたい。おまけに、妙に
肌寒いのはきっと……。オレ、なんも着てない………。
アキラが社の頬を撫でる。ピクリと身体が震えた。
「どうして縛られているかわかる?」
社はふるふると首を振る。
「昨日、進藤と手を繋いで寝てたよね?」
そう言いながら、手首を撫でる。
「それから、進藤と買い物に行ったよね?」
太股を撫でられた。
「今朝は、目のゴミをとってもらっていたね?」
包帯の上から目を触る。
最初の二つはともかく、最後のはどこで見ていたんだ?隠しカメラでもあったのか?
「…ボクの(強調)進藤と、“お”手々繋いで、“お”買い物、おまけに“お”目々に入ったゴミまで
とってもらったの?」
わざとや…“お”ってつけるな…それ言うて可愛いんは進藤だけや…あんたが言うと怖いんや…。
頭がクラクラする。いっそ、気絶してしまいたい。
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「うわ!」
いきなり胸を摘まれて、社は素っ頓狂な声を上げた。やめろ!触るな!
口にそっと指を充てられた。
「しー…静かにして、進藤が起きちゃうだろ…」
進藤、そうや進藤…。
「し…進藤は…?」
クスクスと楽しそうにアキラが笑った。
「進藤は、ボクの部屋でぐっすり眠っているよ。ボクの部屋はここから離れているけど
あんまり大きな声を出すと起きちゃうかもね…」
その言いながら、アキラは社の身体をまさぐり続ける。
まずい……見られて都合が悪いのはお互い様だが、どう見ても自分の方が分が悪い。
「……う…ぁ…」
声を堪えようとしたが、アキラは的確に社の感じるところを暴いていく。
「いやゃぁ…オレ…」
社はヒカルが好きなのだ。それなのに、アキラの愛撫に感じるのはヒカルに対する裏切りだ。だが……。
そやけど…コイツ…めちゃ慣れとる……。情けないことだが経験の少ない社に勝ち目はなさそうだ。
「この前は、ちょっと可哀想だったからね。今日は優しくするよ。」
ちょっと?アレがちょっと?アレを『ちょっと』と言い切るあんたが怖い。「優しくする」と言う
言葉もどこまで信じてよいのやら…。
抗議の声を上げようとしても、口から出るのは鼻から抜けるような甘い声だけだ。
『うそやろ〜〜〜ホンマにオレの声?』
信じられない。
アキラは実に機嫌がいい。鼻歌でも歌い出しそうなくらいだ。なんかセックスをしていると
いう雰囲気ではない。天気のいい日に、日曜大工でもしているかのように、作業をこなしている
といった感じだ。なんか、淡々としていて却って怖い……。
アキラの手の動きに、社の身体が反応する。
「はぁ……あ…ぁあ、ん…」
アカン、なんも考えられへん…。絶体絶命の社だった。
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こんなことになるんやったら、進藤とヤッといたらよかった―――――――――!!!
やせ我慢などするのではなかった。アキラの家だからって遠慮なんかして……。
ヒカルの蜜のように甘い身体が、自分のすぐ側に逢ったのに……。そしたら…そしたら…。
不覚にも涙が出てきた。アキラに触れられて、感じている自分はとても不実な人間に
思える。包帯に涙がしみこんでいく。涙の意味をどうとらえたのか
「泣いてるの?大丈夫…今日はあんなことしないよ。」
と、言った。スタンガンは、壊して捨てたから安心しろと…。アキラの指が社の髪を梳いた。
その指先は優しくて、社に奇妙な感情を抱かせた。いつも、こんな風にヒカルに触れているの
だろうか…。
人と人とも思わないアキラが、ヒカルにだけは優しい。それはある意味誠実とも言えるのでは
ないだろうか?
アキラの唇が、社の頬や首筋を辿っていく。
「う…うぅん…いやや…とうや……」
ヒカルも今の自分と同じように、切なく悶えたのだろうか?頭がぼうっとする。気のせいか
部屋の中に甘い香りが漂う。その中をふわふわと泳いでいるようだった。
自由の利かない身体を捩ろうとすると、アキラが肩を押さえた。
「動いちゃダメだよ?」
そう言いながら、社の唇を自分のそれで塞いだ。
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不自然な体勢を強いられている社の顔の上に、アキラが跨ってきた。前にも一度やらされた。
口元に押しつけられたそれから逃れようと、顔を背けた。
「進藤は舐めてくれたよ?進藤が舐めたものだと思えば、愛しくならないかい?」
なるか!ボケ―――――――――――――――――――――――――――――!!!
と、叫ぼうとしたが、実際口から出たのは自分でも思いもよらぬ言葉だった。
「……進藤が…?」
自分でも信じられないくらいうっとりと訊ねた。おかしい。どうして、こんな気持ちになるんだろう?
きっと、寝ていないせいだ。それで、頭が変になっているんだ。そうに決まっている。
「そう…さっき、ボクの部屋で…」
アキラが社の頬を撫でた。それが合図であるかのように、社はそれを口に含んだ。独特の
味が口に広がり、舌を刺した。
「そうそう…上手いよ…進藤はもっと舌を使って………」
アキラがそう言うと、社はその通りにした。ヒカルのやったことを自分も辿る。何だか
倒錯的で、社は自分でも不思議なくらい興奮していた。
だが、後ろに触れられたときはさすがに抵抗した。
「や…そこはアカン……!」
吐息がかかるほど近くで、アキラが囁いた。
「進藤は、ボクを受け入れてくれたよ?可愛い声で啼いて…それから…」
ヒカルの名を囁かれるだけで、社は逆らえなくなる。まるで、魔法でもかけられたようだ。
ヒカルがヤッたことなら自分も……。ヒカルが感じたことなら、自分も感じたいと
思った。
無抵抗になった社に、アキラはのし掛かる。
「あ…あぁぁぁ………!」
激痛が社を襲う。けれど、ヒカルもこの痛みを感じたのなら…。甘い陶酔感が社の全身を包んだ。
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