とびら 第六章 41 - 45
(41)
和谷はすぐにヒカルの中から出ようとはせず、その名残りを楽しむように目を閉じていた。
しかしそんな和谷にアキラは急かすように言う。
「早くどいてくれないか。進藤、次はボクだ」
ペニスが引き抜かれる感触にヒカルは身震いした。足に精液が流れた。
アキラが腕を引っ張るので、這いずりながらヒカルはそれに従った。
導かれた先は布団だった。
「和谷、それを拭いておいてくれ」
まるで命令するようにアキラは言う。だが和谷は文句も言わずに、畳に落ちているしずくを
ティッシュでぬぐいとっていく。
アキラはヒカルを背後から抱き、胸に手を這わしてきた。
「進藤、ボクの上に座って……」
ヒカルは腰に熱く昂ぶっているアキラのものを感じた。すると自分のそこがそれを欲しいと
ねだるように収縮しだした。
だがヒカルは首を振った。
「いや、だ……」
「……なぜ?」
耳たぶに歯を立てられ、ヒカルは小さな声をあげた。
「なぜ?」
「だって、オレのなかに……」
和谷の残したものがある。だからアキラを受け入れるのには抵抗があった。
「気にしないよ、そんなこと。今さらだ」
ふとももを持ち上げられ、さきほど和谷が支配していたそこにアキラのペニスが侵入した。
「んあ―――ァ!」
支えていた手を離され、自分の重みでそれが奥までもぐりこんできた。
痛い。ヒカルはそれに耐えようと身体をこわばらせた。
「大丈夫だから、力を抜いて……」
「む、り……いたい……っ」
アキラはヒカルの胸を引っ張って、自分に寄りかかるようにさせた。
(42)
アキラの体温を背に感じる。それがヒカルを少し落ち着かせた。
そして混乱した頭でも、アキラのペニスは和谷のそれとは違うことがわかった。
形も長さも太さも、その熱も違う。こんなにも別のものなのだということを初めて知った。
「ほら、進藤。見てみなよ」
ヒカルは言われるままに視線を落とす。アキラの指が結合部に触れていた。
「ボクのに押し出されて、和谷の精液が出てる。こんなにきみの中に入ってたんだね」
白濁液をからめとると、目の前で見せてきた。
「足も陰毛も、びしょびしょだ。和谷、きれいにしてあげなよ」
見ているだけだった和谷にアキラは呼びかける。びくりと和谷は肩を揺らしたが、ヒカルの
膝に手をかけると、かがんでそれを舐めとりだした。
「は、ぁ……ゃあ」
感じたくないのに、身体は自分を裏切って反応する。腰が微妙に揺れだす。
「とう、や……」
「欲しくなった? いいよ」
アキラが自分の足を持ち上げ、そして下ろした。それを繰り返す。
最初はゆっくりだったのが、次第に加速していく。
両足を大きく広がされているので、和谷は難なくヒカルのペニスに触れてくる。
自分で腰を浮かして沈めてくるヒカルに合わせるように、アキラは突き上げてくる。
アキラのペニスが内部を容赦なくえぐる。
「んん、ァ……っや……!」
後ろをアキラに攻められ、前もまた和谷に攻められ、気が狂いそうになる。
また射精感が襲ってくる。だがアキラがその根底を指で戒めてきた。
「や、はなせ……オレ、もっ、やだぁ……」
達することができず、ヒカルは泣いて頼んだ。
「ちょっと待って……ボクも一緒に……」
さらに動きが激しくなる。アキラのそれが膨れるのがわかった。指がペニスから放された。
「……んんっ、ん……」
ヒカルは痙攣した。その身体の奥でアキラがはじけた。
和谷がヒカルの放ったものを吸い上げるようにして飲んでいった。
(43)
前に倒れそうな身体をアキラが支えた。鼓動が伝わってくる。
「しんどう……」
首をひねると、すかさず唇がふさがれる。ヒカルはアキラの頭に手をまわした。
濃厚に舌を絡めあう。アキラの舌が火傷しそうなほど熱く感じられた。
「んっ!」
ヒカルはのどを鳴らした。和谷が自分を無視したことを怒ったのか、萎えたヒカルのペニス
の先端を軽く噛んできたのだ。
敏感なそれに走った痛みに、ヒカルは思わずアキラの舌を噛んでしまった。アキラは驚いた
ように顔を離した。舌に触れ、その指に血がついたのを見ると和谷を睨みつけた。
だが和谷はいい気味だというような表情をした。
「早く進藤を放せよ。俺だってまだまだしたいんだからな」
アキラがペニスを引き抜くと、ゆるんだ後孔から精液が溢れ出てきた。布団が濡れる。
ヒカルは寝かせられると、和谷に足を抱え上げられた。無防備に自分の後孔がさらされる。
「待てよ、オレ……きつい……」
イッたばかりの身体にすぐに挿入してもらいたくなかった。
和谷は首をかしげた。まるでヒカルの言っていることを信用していないかのようだ。
「ふぅん?」
「あぁ、っうぅん……!!」
ヒカルは大きく仰け反った。後ろのすぼまりに指を入れられたのだ。
ぬめったそこを和谷の指がなぶる。にっちゃにっちゃと淫猥な音が響いた。
どこが弱いかを知り尽くしている指が、遠慮なくその部分を突いてくる。
「あぁ、っあ、やぁ、ぃあ……」
喘ぎにあわせるように、ヒカルのペニスも頭を持ち上げてきた。
「大丈夫みたいじゃねえか。行くぞ」
声をあげたがそれは音にならなかった。ゆっくりと自分の身体を和谷が満たしていく。
すでにさきほど二人がそこを犯していたので、もう痛みはまるきりなかった。
あるのは純粋な悦楽だけだ。
「しんどう、いいか? いいか?」
和谷が聞いてくる。ヒカルがうなずくと、和谷は顔をほころばせた。
ヒカルはそれを見てほんの一瞬、罪悪感で情事の熱が冷まされたような気がした。
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和谷は強く腰をおしつけ、内部をペニスで掻きまわすように動かした。
「ほん……っとに、おまえんなか、気持ちいいぜ……っ」
「ひっ!」
尻をぱしんと叩かれた。ヒカルはその反動で和谷のペニスを締めつけた。
するとますます和谷は陶然としてヒカルのなかを荒らしてくる。
アキラはペニスの先端に、乳首をめり込ませようとすることに夢中になっていた。
そんなところに入るわけないだろう、とヒカルはぼんやりとしながらも内心つっこんだ。
だが自分の胸の突起をペニスが押さえているのを見るのは興奮した。
「ひだりの、も……」
ねだるように言う。するとアキラは目に笑みを浮かべ、望むとおりにしてくれた。
ヒカルは両手でシーツを握りしめた。足の指が閉じたり開いたりしていた。
「……あっ、わや! もうっ、あぁぁっ!!」
和谷の腹部へと飛沫が飛んだ。激しい快感に全身が引きつった。
全力疾走したあとのように、息が上がっている。何も考えられなくなる。
「しんどう……そんなに締め付けると、もう一度やるぜ……」
耳元に熱い吐息を吹きかけながら和谷が言う。だがアキラが自分の番だとばかりに、和谷を
押しのけると、まだ余韻が残るヒカルの身体の中へとペニスを突きたててきた。
「くるしっ……やめてく、れっ……!」
しかしアキラはなだめるようにキスをするだけで、ヒカルの頼みを聞き入れてはくれない。
和谷までヒカルのペニスにまた刺激を与えてきた。
突然ぶつかる音がした。だがその衝撃はヒカルには来なかった。
見ると和谷がこめかみのあたりを押さえていた。
「……ってぇーな!」
「そんなとこに頭があるのがいけないんだ」
どうやら腰を動かしていたアキラと、ペニスをいじっていた和谷がぶつかったようだ。
二人は腹立たしそうにお互いをねめつけている。本当に仲が悪い。
それなのに結託して、自分をこうしていいように扱っている。
「おまえたち、二人ともけだものだよ……」
うわ言のようにヒカルはつぶやいた。
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小さな声だったのに、二人の耳にはしっかり届いたらしい。
和谷もアキラも心外だというような表情をしている。
「おまえもだぜ。今の自分の姿、わかってるか?」
「そうだよ、進藤。ほら」
ぎりぎりまでペニスを挿入したまま、アキラはいきなり動きを止めた。
そしてようやく気付いた。自分で腰を振っていたことに。
「あっ……」
頬を赤らめ、ヒカルは静止した。恥ずかしくて目を閉じた。
しかしむずがゆいものが、じわじわとヒカルの思考を犯していく。
ヒカルはアキラが動き出すのを息をひそめて待った。だがアキラはじっとしたままだ。
「どうして欲しい?」
アキラが楽しそうに言う。
「とぉやっ……っん、もっ……」
ヒカルの腰が物欲しげに揺れた。言葉よりも身体が素直に答えている。
「淫乱なきみは、とてもきれいだよ」
アキラがまぶたを舐めた。ヒカルが目を開けるとほほえみ、鼻にかぶりついてきた。
鼻を舌先でつつき、くすぐるように舐めまわす。
「とうやっ……!」
「欲しいって言いなよ」
ヒカルは和谷のほうを見た。和谷はじっとヒカルの動向を見守っている。
二度抜いているためか、少し余裕があるようだ。
(オレはもう三回もイッたのに、どうしてぜんぜん足りないんだろう……)
何かが麻痺しているような感覚。
だが何かをつきとめる気など、今のヒカルにはなかった。
ヒカルはすっと手を差し伸べた。左はアキラに、右は和谷に。
「……オレを満足させてくれよ」
自分では気付かなかったが、その声はひどく艶めいていた。
アキラが抽挿を再開する。和谷はヒカルの肌に紅い痕を残していく。
快楽の波が押し寄せてきた。それはヒカルが自分で動きはじめたからでもあった。
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