失着点・展界編 42


(42)
「…いいかげんにしろ。」
背を向けて上着を脱ぐ緒方が冷ややかに言葉を発し、ヒカルはドキリとした。
「え…?」
「物欲しそうな顔をして夜の街をうろつくんじゃない。優しく声を掛けて
頭を撫でてくれる奴になら誰にだってついて行きそうだったぞ。」
カアッとヒカルは赤くなった。頭に血が登って行く。ある意味見透かされて
いる。現にこうして、自分はここに来ているのだ。
「…コーヒーでも飲むか?」
ヒカルは何も答えなかった。
リュックを背負ったまま突っ立っているヒカルの前を横切って、緒方は
キッチンに立ちポットに水を入れ、湯を湧かし始めた。
そのままその場でタバコをくわえて火を点ける。
フィルターの中の焦茶色の泡の中に細く湯を落とす作業の間沈黙が続いた。
タバコとコーヒーの香りが絡み合って漂う中、やがてフレッシュと
スティックシュガーが添えられたコーヒーがテーブルに置かれた。
「…それを飲んだら、家に送ろう。」
緒方はカウンターにもたれたままタバコを灰皿に置き自分の分に口をつける。
だがヒカルは押し黙ったまま緒方を睨みつづけていた。
「…るくせに…、」
体が震えてくるのを自分の腕で必死で押さえる。
「…わかって…るくせに…、…オレがどうして…ここにきたか…」



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