初めての体験+Aside 42 - 43
(42)
妙に胸が苦しくて、社は目を覚ました。ぼんやりとした視界の中に、秀麗な顔がある。
「……?と…や…?」
自分の発した言葉に、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
とうや?と、と、と、塔矢!なんでや―――――――――――――――――――!!!
身体を捻ろうとしたが自由が利かない。両腕を頭の上で固定され、縛られているようだ。
下半身も膝裏を何か棒ですくい上げられ、固定されている。自分の今の姿を思うだけで
顔から火が出そうだ。アキラは無言で、目の前で包帯を扱いた。そのまま社の目を塞ぐ。
「ちょ…塔矢…やめ…」
頭の中はパニックだ。ヒカルと一緒に眠っているんじゃなかったのか?どうして、ここに
いるんだ?
「…先に、目を塞いだ方がよかったな…やりにくい…」
頭を支えられたまま社は硬直した。何でもないことをやるように、独り言を呟くアキラが
不気味だ。
「うん…これでいい…ボクは社は包帯と決めているんだ…」
満足そうに笑う。
『ちょお、待てや〜包帯と決めているってどういうこっちゃ…』
他にもいるのか?縄係とか、手錠係とか…?怖すぎる。泣きたい。おまけに、妙に
肌寒いのはきっと……。オレ、なんも着てない………。
アキラが社の頬を撫でる。ピクリと身体が震えた。
「どうして縛られているかわかる?」
社はふるふると首を振る。
「昨日、進藤と手を繋いで寝てたよね?」
そう言いながら、手首を撫でる。
「それから、進藤と買い物に行ったよね?」
太股を撫でられた。
「今朝は、目のゴミをとってもらっていたね?」
包帯の上から目を触る。
最初の二つはともかく、最後のはどこで見ていたんだ?隠しカメラでもあったのか?
「…ボクの(強調)進藤と、“お”手々繋いで、“お”買い物、おまけに“お”目々に入ったゴミまで
とってもらったの?」
わざとや…“お”ってつけるな…それ言うて可愛いんは進藤だけや…あんたが言うと怖いんや…。
頭がクラクラする。いっそ、気絶してしまいたい。
(43)
「うわ!」
いきなり胸を摘まれて、社は素っ頓狂な声を上げた。やめろ!触るな!
口にそっと指を充てられた。
「しー…静かにして、進藤が起きちゃうだろ…」
進藤、そうや進藤…。
「し…進藤は…?」
クスクスと楽しそうにアキラが笑った。
「進藤は、ボクの部屋でぐっすり眠っているよ。ボクの部屋はここから離れているけど
あんまり大きな声を出すと起きちゃうかもね…」
その言いながら、アキラは社の身体をまさぐり続ける。
まずい……見られて都合が悪いのはお互い様だが、どう見ても自分の方が分が悪い。
「……う…ぁ…」
声を堪えようとしたが、アキラは的確に社の感じるところを暴いていく。
「いやゃぁ…オレ…」
社はヒカルが好きなのだ。それなのに、アキラの愛撫に感じるのはヒカルに対する裏切りだ。だが……。
そやけど…コイツ…めちゃ慣れとる……。情けないことだが経験の少ない社に勝ち目はなさそうだ。
「この前は、ちょっと可哀想だったからね。今日は優しくするよ。」
ちょっと?アレがちょっと?アレを『ちょっと』と言い切るあんたが怖い。「優しくする」と言う
言葉もどこまで信じてよいのやら…。
抗議の声を上げようとしても、口から出るのは鼻から抜けるような甘い声だけだ。
『うそやろ〜〜〜ホンマにオレの声?』
信じられない。
アキラは実に機嫌がいい。鼻歌でも歌い出しそうなくらいだ。なんかセックスをしていると
いう雰囲気ではない。天気のいい日に、日曜大工でもしているかのように、作業をこなしている
といった感じだ。なんか、淡々としていて却って怖い……。
アキラの手の動きに、社の身体が反応する。
「はぁ……あ…ぁあ、ん…」
アカン、なんも考えられへん…。絶体絶命の社だった。
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