無題 第2部 43
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「塔矢!」
用事が済んで棋院会館を出ようとした時、出入り口で突然声をかけられた。
「進藤?」
「おまえを待ってたんだ。」
「ボクを…?」
「この間さ、おまえにイヤな思いさせちゃったし…お詫びってんじゃないけど、よかったら、
今日、ウチに飯食いにこねぇか?」
和谷の家に誘った時の事を言っているのだろう。
「それは…嬉しいけど。」
「それとも、今日、なんか用事ある?」
「いや、特には。」
「そっか、それじゃ良かった。行こうぜ?」
そう言って彼は嬉しそうに笑った。
彼の明るい笑顔が好きだ。それはボクの心を軽くしてくれる。
本当は今夜はあの人のマンションを訪ねようかと思っていたけれど、それはいつでもいい。
こうやって、友達の家に遊びに行くなんて初めてだ、とアキラは思った。
友達?
友達、なんだろうか。ボクにとって彼は。
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