誘惑 第三部 43
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「進藤…」
低い、甘い声がオレを呼ぶ。
目を開けると塔矢がオレを見ている。
オレを捕らえて放さない、真っ黒な、深い、深い色の瞳。
久しぶりに見たその目の色に、ゾクリと背が震える。
「…いい?」
そんな目で見られたらオレが逃げられないって知ってるくせに、わざわざ聞いてくんなよ、馬鹿。
「やだって言ったらやめんのか?」
「本当に本気で嫌なんなら。嫌なの?」
嫌なはず、ない。
それどころか。
おまえは知らない。
おまえがいない間、どんなにオレがおまえの事を思ってたか。
オレがどんなにおまえが欲しかったか。
おまえを想ってオレが何してたかなんて。
おまえは知らない。
だから教えてなんかやらない。
欲しくて欲しくて待ち焦がれてたなんて、言ってなんかやらない。
だからおまえももっとオレを欲しがれよ。
欲しくて欲しくてたまらないって目で、オレを見ろよ。
オレはおまえのそんな目がたまらなく好きだ。
オレに欲情してるおまえの目が好きだ。
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