平安幻想異聞録-異聞- 43


(43)
座間一行の背を見送ってから、佐為は、ヒカルの手を引き、
近くの控えの間に引き込んだ。
「な、なんだよ、佐為!」
「いいから」
部屋の隅にヒカルを押し込むと、佐為は固く握られたヒカルの手をとった。
強ばったようにきつく結ばれたその手の指を、佐為はゆっくりと、
一本一本、引きはがしていく。
そのヒカルの手のひらは血まみれだった。
ヒカル自身がそれを見て、息を飲んだ。
座間や菅原と対面する緊張のあまり、強く握りしめられた手の爪が、
皮膚を破っていたのだ。
気がついたら、急に傷がズキズキと疼いてきた。
佐為が、少し身をかがめて、こつんとヒカルの額に自分の額をあてた。
「よく我慢しましたね」
それが、傷に対してのものなのか、座間の前から逃げ出さなかったことに
対してのものなのか、ヒカルにはわからなかった。
佐為はヒカルの血に汚れた手を取り、自分の口に持っていく。
そして、その舌で手のひらと指についた血を、丁寧に舐めとっていった。
昔、子供の頃転んだときに、自分のひじや腕の擦り傷を舐めてくれたお母さん
みたいだなぁ、と思いながら、ヒカルはその光景をながめる。
なのに、佐為の、形のよい唇が口付けするように、自分の指をたどり、
手のひらに新たな血がにじみ出るのをすするのを見ているうちに、
こんなにも体が熱くなるのはなぜなのだろう。
かくんとヒカルの膝から力が抜けた。そのヒカルをあわてて佐為がささえる。
佐為の、指へのゆるい接触だけで、立っていられないほど感じてしまったヒカルは、
顔を真っ赤にして佐為にしがみついた。



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