Linkage 43 - 44


(43)
「……その薬を飲むと、よく眠れるんですか?」
 アキラの問いかけに緒方は薄く笑い、頷いた。
「まあな。今までの苦労が馬鹿らしく思えるほど呆気なく寝付けるんで、たまに恐くなるが……」
「薬局で売ってるんですか、その薬?」
 アキラは薬に強い興味を抱いたのか、真剣な眼差しで緒方に尋ねた。
「薬局では売ってないが……まあ、ちょっと特殊な入手ルートがあるんでね。どうやら興味津々の
ようだが、子供には危険すぎる。小学生が睡眠導入剤を使うなんて世も末だぞ」
 穏やかな口調でそう忠告する緒方に、アキラは一応小さく頷いてはみたものの、諦めきれず、
なおも食い下がる。
「ボクだって……薬を使うのは恐いです……。でも、他に方法ってありますか?それに……緒方さん、
子供子供って言うけど、ボクはもう……」
「もうすぐ中学生か?ハハハ。確かにそうだが、今はまだ子供料金で電車に乗れる、ランドセルを
背負った可愛い小学6年生だろ?」
 反論の余地のない緒方の言葉に、アキラは不満げに頬を膨らませた。
緒方はやれやれといった表情で、アキラの頭をポンと撫でると、腕組みをして何事か考え始める。
(他に方法があるかと言われても……あれば不眠症歴の長いオレがとっくに実践してるな……。
あの薬はこれまでに特に副作用らしき症状もないし、量を減らせば……いや、ダメだ。
だいたい塔矢家の冷蔵庫に保管なんかできるわけがないだろう……。露見したら、オレはともかく
アキラ君が可哀想だ。……だが……毎週の研究会や碁会所で会う時に、すぐ使い切るという条件で
渡してやれば、冷蔵保存しなくても問題ないかもな……)


(44)
 虚空を見つめながら思案に耽る緒方に、ついさっきまで膨れ面だったアキラが心配そうに声をかける。
「……何を考えてるんですか、緒方さん?それとも……怒ってるんですか?」
 アキラの声に緒方は我に返ると、肩をすくめて笑った。
「別に怒ってなんかいないぞ。アキラ君のお悩みをさてどうしたものかとイロイロ考えていたのさ」
 アキラはホッとしたのか胸を撫で下ろすと、グラスを手に取り中身をゆっくり飲み干した。
「……で……いい方法は思いつきましたか?」
 緒方は唇の片端をつり上げて笑うと、仕方なさそうに口を開いた。
「いい方法は、やはりあの薬しかないという結論に達したよ。オレとしては不本意だがな……」
 アキラは一瞬驚いたものの、すぐ嬉しそうに緒方の腕を掴む。
「いいんですか?ホントに?ホントに?」
「そこまで喜ばれるとはな……それだけ辛かったということか。まあ適量なら問題ない……だろうな、
恐らく。……だが、アキラ君の適量がよくわからん」
 緒方はそう言って煙草を取り出し火をつけると、窓の外では既に日が傾き始めていることに気付き、
腕時計にチラリと目をやる。
冬場は日暮れも早いだけに、時間はまだ4時を過ぎたばかりであった。
ライターを手の中で転がしながら、再びしばらく思案する緒方だったが、やがて期待と不安の入り
混じった表情を浮かべるアキラに視線を向ける。



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