失着点・龍界編 44


(44)
「…それだけに惜しいよ。それなりに基本からきちんと指導を受けていれば
プロの世界に入ることだって…」
「黙れって言っているだろう!」
再びえぐられるように激しくされてヒカルは表情を歪め、脂汗を流す。
三谷はヒカルのペニスを掴んでそこにも激しく刺激を与えだす。
「ううっ…ぐっ…!」
快感には程遠い激しさにヒカルは身をよじる。
そうされながらもヒカルは自分よりも三谷の方が痛みに耐えているように
思えて仕方がなかった。
「…三谷、お前の居るべき場所は、こんなところじゃない…」
「貴様に何が分かるって言うんだよ!!」
ヒカルに苦痛を与えていると分かっていながら、三谷は動く事を
止められなかった。
…オレは、何をこんなに腹を立てているんだ…?
今まで誰かに対して腹を立てるなんてなかった。他人には何も期待せず、
その空白を金で買える物で埋めていた。でも、自分が何を本当に
欲しがっているのか、それすら分からなかった。
ヒカルのお陰でそれがようやく分かりかけた。
だが自分を変えてくれたはずのそのヒカルが、あれだけ望んでようやく手に
入れたはずのものをあっさり手放した。その事で自分の気持ちが踏みにじ
られたような気がした。三谷にはそう思えた。だから許せなかった。
だがもうそれらの事も三谷にとってはどうでもいい事だった。
…どうでもいい事のはずだった。



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