初めての体験 44
(44)
タクシーに乗って連れて行かれたところは、あの時と同じような料亭だった。
見知らぬ土地で、しかも財布も持っていない。恐る恐る店の入り口をくぐった。
前後を桑原と料亭の仲居達に挟まれ、逃げ出すことも出来ず、促されるままに廊下を歩く。
時折、桑原が後ろを振り返って、ヒカルを急かしたが、足がすくんで、うまく歩けない。
通された部屋は前の時と同じような部屋だった。あの奥の間には、以前のように
床が延べられているのだろうか―――。怖い!
カタカタと小さく震えるヒカルを見て、桑原は自分が高ぶっていくのを感じた。
「桑原先生…やめてください…オレ…」
ヒカルは泣きそうな声で訴えた。
「大丈夫じゃよ…お前さんが大人しくすれば、この前のように薬を使ったりはしないから…」
老人の指がヒカルの項を撫で上げた。背筋に悪寒が走った。
「や…!」
ヒカルが老人を振り払って、逃げようとした。
突然、奥の間の襖が開いた。中から男が二人飛び出して、ヒカルを押さえ付けた。
「!!…うそ…」
ヒカルは自分の目を疑った。それは、嘉威と俊彦だった。この二人が何故ここに…!
「や…どうして…」
ヒカルは激しく首を振った。あらん限りの力を振り絞って暴れようとしたが、
両肩と両足を押さえ付ける力には敵わなかった。ゼエゼエと荒く息をつく
ヒカルのズボンに、老人が手をかけた。
「せんせい…!」
やめて――――と叫ぼうとしたが出来なかった。老人の指がヒカル自身を取り出し、
さすり上げたからだ。ヒカルは「ひっ」と小さく悲鳴を上げただけだった。
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