初めての体験+Aside 44 - 45


(44)
 こんなことになるんやったら、進藤とヤッといたらよかった―――――――――!!!
やせ我慢などするのではなかった。アキラの家だからって遠慮なんかして……。
ヒカルの蜜のように甘い身体が、自分のすぐ側に逢ったのに……。そしたら…そしたら…。
 不覚にも涙が出てきた。アキラに触れられて、感じている自分はとても不実な人間に
思える。包帯に涙がしみこんでいく。涙の意味をどうとらえたのか
「泣いてるの?大丈夫…今日はあんなことしないよ。」
と、言った。スタンガンは、壊して捨てたから安心しろと…。アキラの指が社の髪を梳いた。
その指先は優しくて、社に奇妙な感情を抱かせた。いつも、こんな風にヒカルに触れているの
だろうか…。
 人と人とも思わないアキラが、ヒカルにだけは優しい。それはある意味誠実とも言えるのでは
ないだろうか?

 アキラの唇が、社の頬や首筋を辿っていく。
「う…うぅん…いやや…とうや……」
ヒカルも今の自分と同じように、切なく悶えたのだろうか?頭がぼうっとする。気のせいか
部屋の中に甘い香りが漂う。その中をふわふわと泳いでいるようだった。
 自由の利かない身体を捩ろうとすると、アキラが肩を押さえた。
「動いちゃダメだよ?」
そう言いながら、社の唇を自分のそれで塞いだ。


(45)
 不自然な体勢を強いられている社の顔の上に、アキラが跨ってきた。前にも一度やらされた。
口元に押しつけられたそれから逃れようと、顔を背けた。
「進藤は舐めてくれたよ?進藤が舐めたものだと思えば、愛しくならないかい?」
なるか!ボケ―――――――――――――――――――――――――――――!!!
と、叫ぼうとしたが、実際口から出たのは自分でも思いもよらぬ言葉だった。
「……進藤が…?」
自分でも信じられないくらいうっとりと訊ねた。おかしい。どうして、こんな気持ちになるんだろう?
きっと、寝ていないせいだ。それで、頭が変になっているんだ。そうに決まっている。
「そう…さっき、ボクの部屋で…」
 アキラが社の頬を撫でた。それが合図であるかのように、社はそれを口に含んだ。独特の
味が口に広がり、舌を刺した。
「そうそう…上手いよ…進藤はもっと舌を使って………」
アキラがそう言うと、社はその通りにした。ヒカルのやったことを自分も辿る。何だか
倒錯的で、社は自分でも不思議なくらい興奮していた。
 だが、後ろに触れられたときはさすがに抵抗した。
「や…そこはアカン……!」
吐息がかかるほど近くで、アキラが囁いた。
「進藤は、ボクを受け入れてくれたよ?可愛い声で啼いて…それから…」
ヒカルの名を囁かれるだけで、社は逆らえなくなる。まるで、魔法でもかけられたようだ。
 ヒカルがヤッたことなら自分も……。ヒカルが感じたことなら、自分も感じたいと
思った。 
無抵抗になった社に、アキラはのし掛かる。
「あ…あぁぁぁ………!」
激痛が社を襲う。けれど、ヒカルもこの痛みを感じたのなら…。甘い陶酔感が社の全身を包んだ。



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