トーヤアキラの一日 45


(45)
アキラは意識を失っているのか眠っているのか自分でも定かではなかったが、夢の中を
漂っているようで重かった体がふわりと浮いているような気分だった。
他の人間が触れることの出来ないヒカルの身体の一部分を手に入れた事で、刹那的な
満足感で一杯だったが、何か言い知れぬ物足りなさを感じてもいた。
ヒカルの淫靡に輝く眩しい顔が目の前をグルグル回って誘っているのに、抱き締める事が
出来ずに、もどかしい気持ちで追いかけているような気分だった。
遠くから自分を呼ぶ声がして、だんだん意識が現実に戻って来る。あれ程熱かった身体も
冷めて来て、部屋の空気を寒いと感じるようになっていた。
大好きなヒカルの自分を呼ぶ声が段々はっきりと聞こえて来た。

ヒカルは心配になって大きく体を動かそうと下半身に力を入れて横に動こうとした。
その瞬間、アキラは条件反射の様に口の中のモノを奪われまいと、強く噛み付いて来た。
「うわぁぁ!痛ってェ!!!バカ!!何すんだよ、痛いだろ!!やめろよ、塔矢!!」
強い口調でヒカルに怒鳴られて、やっと完全に意識が戻ったアキラは、慌てて顔を上げた。
アキラは下を向いたまま声を出す。
「ゴ・・・・ごえん・・・・」
「??塔矢??」
アキラはずっと口を開いてヒカルの分身を咥えていたので、顎がガクガクになっており、
口を閉じる事が難しく、言葉をちゃんと喋る事が出来なかった。
二人は起き上がって向かい合った。
情けないアキラの顔を近くで見て、ヒカルは大声で笑い出す。
「ウッヒャヒャ!!お前のそんな顔、始めて見たぜ。アッハハハハ」
「ヒ・・・・ひろい・・・・」
「そんな泣きそうな顔する事ないだろ。どれ・・・・」
ヒカルは穏やかな表情でアキラの両顎を手のひらで押さえて、軽く撫で回した。
「お前、やり過ぎなんだよ、もう、全くさぁ・・・・・・ほら、ちょっとゆっくり口を閉じて
みろよ」
「あん・・・・あ、ううぅぅ・・・いたっ・・・・」



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