金魚(仮)(痴漢電車 別バージョン) 45


(45)
 もう一度ヒカルを布団の上にそっと横たわらせた。そして、裸で震えているヒカルの前で、
自分も服を脱いだ。ズボンも下着も、全て脱ぎ捨てヒカルの上に再び覆い被さった。
 ヒカルの腕がアキラの首にまわった。両手でギュッと抱きしめてくる。そうやって、
しがみついたまま、彼は不安そうに瞳を揺らせた。
「なあ…オレ、したことないんだ…どうしたらいい?」
どうしたらいいと訊かれても………
「オマエ、どう?したことある?」
嘘を言っても仕方がないし、どうせすぐにバレるので、アキラは正直に「ない」と、答えた。
「じゃあ、どうするんだよ?」
 心細げな声に身体が震えた。どうするかなんて、自分にもわからない。ただ、身体の奥から
突き上げてくるような熱さが、その答えだと思った。
 「なあってばぁ…」
ヒカルは軽くアキラを揺すった。駄々をこねるように、何度も何度も身体を揺さぶる。
「甘えてるの?赤ちゃんみたいだ…」
「だって…」
オマエは怖くないの?と、ヒカルはアキラを見つめる。
「うん…怖い…キミと同じ…」
その瞬間、ヒカルは安心したかのように、全身の力を抜いた。項にかけられていた腕がするりと
肩を滑って、布団の上にぱたりと落ちた。



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