Linkage 45 - 46


(45)
「……アキラ君、今晩ここに泊まれるかな?先生にはオレの対局の話を聞きたいとか、将来のことを
相談したいとか、適当に理由を言って……。明日はオレがキミの登校時間までに、ちゃんと自宅に
送るから。取り敢えず、オレがアキラ君の適量を見定めてから、実際に渡した方がいいんでね」
 アキラは腕組みしてしばらく考え込んでいたが、やがて緒方の方に向き直ると力強く頷いた。
「いいですよ。じゃあ今かけちゃうんで、電話を借りていいですか?」
 そう言って緒方の返事も待たずにすかさず立ち上がるアキラのあまりに速い行動ぶりに、緒方は
呆気にとられるばかりで、返事もまともにできない。
(さっきまで落ち込んでいた子が、これだからなァ……)
 そうこうしている間に、アキラはPCデスクの上部の棚にある電話で、今夜緒方の自宅に泊まる
旨を手早く伝え、受話器を置いた。
「お父さんが出て、緒方さんによろしく伝えてくれって言ってました。あと、迷惑をかけない
ようになって言われちゃいました。緒方さん、今夜はよろしくお願いします」
 アキラは嬉しそうにそう言って、ぺこりと頭を下げた。
「……ああ、そうかい……」
 アキラの行動力にほとほと感服したと言わんばかりに、緒方は力無く煙を吐き出した。


(46)
「アキラ君、気分転換にドライブでも行くか?」
 日は暮れたものの、夕食にはまだ早い。
明るく振る舞おうと努力しつつも、やはり謎の少年との一局によるショックを隠しきれない
アキラの様子を慮り、緒方はそう提案した。
「どこに行くんですか?」
 緒方の本棚にあった熱帯魚の写真集をソファに腰掛けて見ていたアキラは、顔を上げ、
興味深げに尋ねた。
「これからだと、そう遠くまでは行かないがね。そうだな……横浜にでも行ってみるか。
夕飯は中華街で食べないか?」
「中華街って関帝廟があるところですよね?」
 アキラの言葉に緒方は僅かに驚きの表情を見せる。
「関帝廟とは随分詳しいな。三国志が好きなのかい?」
 アキラはニコッと笑って頷くと、立ち上がって本棚に歩み寄る。
「緒方さんも何冊も持ってるじゃないですか。ボク、こんないろんな種類の三国志は読んでないなぁ……」
 楽しそうに本棚を覗き込むアキラに、緒方は優しく語りかけた。
「読みたいなら貸すから、遠慮なく言ってくれよ。アキラ君、夕飯は中華でいいんだな?」
「もちろんっ!」
 元気よく答えるアキラに緒方は頷くと、アキラの肩を叩く。
「それじゃあ出発するか。どうせここに戻ってくるんだから、アキラ君は上着以外、
何も持たなくていいぞ」
 アキラは緒方の言葉に従い、ソファの脇に置いてあった紺色のピーコートを手にすると、
黒いレザージャケットを羽織りながら玄関へと向かう緒方の後についていった。



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