白と黒の宴4 45 - 46
(45)
「あ…っ!」
ヒカルとの行為を思い浮かべていたアキラは、ふいにその時の感覚が蘇って声をあげる。
「それで…?もっと、どんなんや、言うてみい…」
「…だ…め…」
「何でや…言うてみ、同じように抱いてやる…今度はちゃんとイかしてやる…」
その条件がアキラの心を揺さぶったようだった。
「…進藤は…初めてで…、ぎこちなくて…」
誘導尋問にかかるようにアキラは社に伝える。
社の行為がアキラの言葉通りに変化し、ヒカルから受けたものに近付く。
「はあっ…ア、うんっ…!」
何度も制御されて幾分勢いをなくしかけていたアキラのモノが再び反り上がる。
「うああっ…」
ヒカルの事を思い浮かべながら社に抱かれる事は嫌だった。それでも自分の体は
どうしようもなく疼き反応してしまう。
「…オレを別の男と思おてええんや…」
その言葉に最後の鍵が外されるようにしてアキラの熱が渦巻き一気に外に向かう。
あの時はただ単にヒカルが性的な技術において未熟だからと思った。
だが、やはりヒカルの精神が全て自分に傾いているわけではないという隙間があった。
それが悔しかった。
自分が全てを注ぎ込むほどにはヒカルは自分には気持ちを重ねてくれていない。
2人の間にはまだ何か取り払われていない壁がある。
合宿の時点でヒカルの頭の中には高永夏への強いこだわりがあって、それによって
整理しきれないでいる感情をアキラに向けたという向きがあった。
(46)
ヒカルに対する怒りや悲しさと、それでも止まらない愛しさがアキラの中で渦巻き、
吹き上がろうとする。そのアキラの反応をさらに煽り立てるように社の愛撫が続く。
「ハ…ア…ッ、ンく…ッ」
社の舌が、指先が、そして体の奥深くのモノがアキラから完全に思考を奪い支配する。
「……一緒に」
それまでシーツを掴むだけだったアキラの手が、初めて社の胴にまわされた。
「…一緒に…お願い…一緒に」
うわ言にように漏らしもう片方の腕が社の首にまわされる。無意識にアキラはそうしていた。
アキラのその言葉に導かれるように、社は体の中心が溶けるような熱さを感じた。
社の逞しい骨格を感じながら、アキラは何年か後の、成人として遥かに自分より厚い胸板と
広い背中、力強い二の腕を持って成長したヒカルに抱かれているような幻想の中に居た。
緒方と社の体が交錯し、そのどちらでもない大きな胸に包み込まれていた。
次の瞬間アキラの内部がそれまで以上にうねって昂り、駆け上がる。
社も我慢し切れず腰の動きを速めてその機を逃さず一気に同時に駆け抜ける。
「ンッ…ッ」
「ううっ…くっ…ッ!!」
互いに声を押さえ、吐息だけで身を打ち震わせて余韻を共有する。
社は腹部に、アキラは体内の奥に熱いものが弾けるのを感じた。
あまりの絶頂感に社は自分の体を支え切れず、アキラの体の上に崩れ落ちた。
互いに触れあった部分から滝のような汗が流れ、シーツはぐっしょりと濡れていた。
社の体の下で、アキラは失神したようにぐったりとして動かなかった。
薄く白い胸が汗の粒を纏い上下に動いていた。よろりと身を起こすと社はその表面にある
鮮紅に尖り経った突起を慈しむようにそっと口に含み、吸った。
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