誘惑 第三部 45 - 46
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塔矢の身体の上にのしかかったまま、唇に噛り付く。
貪るようなキスを繰り返すうちに、気付いたらあいつの手がオレの胸を探っていた。
そしてもう片方の手は腰から脚に向かって動き、オレの尻を捏ね回し、指先で入り口を擽る。
やられてばっかじゃ悔しいから、上にいるのをいい事にあいつの胸元に顔を寄せて、紅く色づいた
乳首をぺロッと舐めてやると、俺の下であいつの身体がひくりと震えた。
調子に乗ってそれを舌先で捏ね回し、次第にふっくらとしてきたそれに噛り付くと、対抗するように
あいつの指がぐっと俺の中に捻り込まれた。
あいつの指がおれの奥に入っていくのに従って、オレは膝をついて腰を高く上げてしまう。
オレの中で動くあいつの指を感じながら、あいつの胸に舌を這わせたまま、更に片膝を脚の間に
割り込んで開かせて、勃ち上がりかけているあいつを握り込むと、オレの手の中のあいつはびく
びくと熱くふるえる。
ちょっと待て。この体勢は、えーと、あれれ?
……いいや、いっちゃえ。
勢いに任せてそのまま塔矢の後ろにオレを押し付けると、あいつは、え、と言う風に目を瞠る。
ふん、ざまあみろ。そんな風に笑ってやって、そのままぐっと先端を押し進める。すると、一瞬、
躊躇したみたいに見えたあいつはすぐにオレに向かって挑発的な笑いを浮かべた。そしてあい
つの身体は素直にオレを受け入れる。いやそれどころか、むしろ積極的にオレを引き込むよう
に身体を開く。
オレを飲み込んだ塔矢は驚くほど貪欲だった。
熱く蠢く内壁は誘い込むように締め付け、煽るように動く。
奔放に、貪欲に動く塔矢が、オレの手の中から逃げていってしまわないように乱暴に引き寄せて
身体を揺すると、悲鳴にも近い喘ぎ声があがってそれがオレを燃え立たせる。
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オレのものだ。塔矢。オレの、オレだけの。
きっと独占欲なら、オレだって相当だ。きっとこいつは気がついていないんだろうけど。
オレ以外のヤツがコイツを見るのがイヤなんだ。知らないヤツが擦れ違いざまにおまえを振り返るだけで
イヤなんだ。自分で自分の価値をわかってないこいつが不安で、そんな無防備なこいつを人目
に晒すくらいならいっそこの部屋にずっと閉じ込めておきたいって思うくらい、オレはこいつを独り
占めしたいんだ。
「オレを…みろよ…っ!」
目を閉じて快楽を貪る塔矢の両腕を掴むと、一瞬アイツは動きを止めて薄目を開けるけど、突き
上げるオレの衝撃に耐え切れずにまた頭を仰け反らすから、オレの目にはアイツの白い喉しか
見えなくなる。髪を掴んでこっちを向けさせると、小さな悲鳴を上げてオレを見たアイツは、オレの
目を見て薄く笑った。
貪欲な瞳がオレを煽る。淫らな笑みを貼り付け、オレの腰に脚を絡ませたまま、もっともっとよがら
せろとオレを強請る。
こいつはいっつもそうなんだ。
オレの嫉妬も、独占欲も、オレのつまんない焦りとかプライドとか、そんなものをこいつは全部全部
飲み込んで、それをみんな自分の熱の燃料にしちまう。
悔しいよ。
いっつもオレばっかり追いかけて、焦って、不安になって。そんなオレのイヤな気持ちを、そんなに
美味そうに飲み干すなよ。どんなに乱暴にしても、いたぶってみても、逆に優しくしても、焦らしても、
何したって嬉しそうにしやがって。
畜生。
塔矢の馬鹿野郎。
そんなにブラックホールみたいになんでもかんでも飲み込むんじゃねぇよ。
たまには負けて降参したっていいじゃないか。
畜生。そうやって身体ごと打ちつけるオレに応えるように、あいつの声が上がる。その声に煽られて
オレは更に激しく動く。一際高い声をたててオレを締め付けようとするあいつにタイミングを合わせて、
オレはあいつの奥にオレをぶちまけてやった。
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