クチナハ 〜平安陰陽師賀茂明淫妖物語〜 46


(46)
「・・・・・・」
――どうしたのだろう。
何故緒方はこんな怖い顔をしているのだろう。
さっきまではこの人にしては珍しいくらい穏やかだったのに。
己が何か怒らせるようなことを云ってしまったのだろうか。
緒方が折角己のために尽力してくれると云ったのに、それを蔑ろにするようなことを
云ったからだろうか。

緒方はまだ、明にはよく分からない感情を湛えた目で、じっと明を見つめている。
息苦しくなって目を逸らすと、視線の向いた先に青紫色の光があった。
――夕暮れ。
ぞくっと背筋に震えが走る。
日が落ちるまでにはまだ少し間があると思っていたが、もうこんな時刻になっていたのか。
迫り来る夜の予感と共に、あのおぞましい責め苦への恐怖が甦る。
・・・・・・
「ゃうっ!」
反射的に声が洩れた。
「む?どうした、賀茂!」
「あ、あ、あ・・・あ・・・ぁ・・・っ!ふぅぅう・・・っ!」
脇息に載せていた肘ががくんと滑り落ちる。
明は腰から下を切なくよじり、頬を紅潮させて涙を滲ませた。
「・・・妖しか?おまえの中のそいつが、また暴れ出したのか!?」
緒方に抱き起こされながら、白い喉を仰け反らせてコクコクと頷く。
予想しつつ恐れていたことが起こったのだ。
 
 



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