無題 第2部 46
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「塔矢、起きてる…?」
「ウン…」
「さっき…ゴメンな…オレ、おまえと打ちたくなかったわけじゃないんだ。
たださ…あれは…特別なんだ。
もうちょっと、もっと時間がたてば…いつか…オレ…」
薄闇の中で、アキラはぼんやりと考えた。
特別、と言うのはあの碁盤の事なのだろうか。
「もっと時間が経てば…いつか…」
その言葉が、どこか心に引っかかった。どこかで聞いた事のある言葉…どこでだったろう…
「…進藤…?」
そっと彼の名を呼んでみたが、返ってくるのは穏やかな寝息ばかりだった。
―なんでだろう…大事な事だったような気がするんだ…だけど…
心の底に疑問を残したまま、しかし、いつしかアキラも眠りについていた。
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