Shangri-La 46
(46)
この扉を開けてもよいものだろうか?
ヒカルの部屋の前で、もう一度考えながら、
ノブを握る手にそっと力を込めると、ドアはあっさり開き、
ベッドの上で大の字に寝ころんだヒカルが目に飛び込んだ。
側によると、規則正しい寝息を立ててぐっすりと眠っている。
アキラは拍子抜けして一瞬呆けたが、
慌ててヒカルに布団をかけ直してやった。
今に始まったことでもないが、自分のためだけに
ヒカルに色々なことを押し付けてきたのは百も承知だ。
でも、部屋から出された時の、怒気を含んだヒカルの声が消えない。
またこうして、ヒカルの寝顔を見られる日は来るだろうか?
また以前のように抱き締めてはもらえるだろうか?
考えれば考えるだけ深みに嵌まっていく――今のアキラには、
ネガティブな思考を打ち消すだけの自信も余裕もなかった。
眠っているのなら、今日はもう帰ってしまおう。
昨日の今日で顔を合わせてしまえば気まずいし辛いけど
少し時間が経てば気持ちも落ち着くだろうし、
もしかしたらうまい対処方法も浮かぶかもしれない。
アキラはそれまでとは打って変わった
きびきびとした動きで手早く服を着ると
枕元の床に膝を突いて、ヒカルの寝顔を眺めた。
ヒカルはぐっすりと眠っている。
その安らかさこそが、アキラの心を締めつけた。
その苦しさに視界が白くぼやけてゆき、やがて何も見えなくなった。
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