うたかた 46


(46)
 加賀の腰に回した手に、暖かいものが触れた。
 ヒカルの手に、加賀の手が重なる。
 そのままヒカルの手を持ち上げたかと思うと、加賀は小さな指にキスをした。
「…かが?」
 広い背中の向こう側からでは、その表情が見えない。
 ヒカルが小首を傾げていると、指に濡れた熱いものが絡んだ。加賀がヒカルの指を口に含んでいるのが僅かに見える。
「あ、あの…ちょっと…っ」
 ちゅく、と湿った音がして、途端にヒカルは赤くなった。反射的に腕を引き抜こうとしても、加賀にしっかり掴まれていて敵わない。
 加賀の舌はヒカルの指を丹念に愛撫して、その根本を舐め上げた。
「ぁ…ッ」
 堪えきれずに声を上げたヒカルを、加賀は振り向いてきつく抱きしめた。
「‥加賀…?」
 押しつぶされそうなほどの抱擁に面食らいながら名前を呼ぶと、加賀は少し腕の力を緩め、骨張った大きな手をヒカルの服の隙間からそっと入れた。
「っ……」
 直に腰を撫でられ、びくん、と背中が震える。何かがぞくぞくと背筋を駆け上っていった。
 普段ならそんな所触られてもくすぐったいだけなのに、今のヒカルの肌はひどく敏感になっていて、全身が性感帯になったかのようだった。
 加賀のシャツの胸元をぎゅっと握ったまま、両腕を突っぱねる。いやいやをするように首を振るヒカルを、加賀は穏やかな口づけで制した。



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