トーヤアキラの一日 46 - 47
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ヒカルに心配して貰ってアキラは嬉しかった。ヒカルの温かくて柔らかくて優しい手が
自分の顎に当てられているのを感じるだけで幸せな気分で一杯だった。
ヒカルに言われるままに、少しずつ顎を動かすと、ガクンと口が閉じた。
ヒカルの手が離れるのが嫌で、自分の手を上から重ねてヒカルを真っ直ぐに見詰める。
「進藤・・・・・好きだ」
そう言って体を引き寄せようとすると、ヒカルは慌てて手を引いてしまった。
「もうダメだってばぁ。寒くなって来たからズボンはくぞ!・・・ったく痛かったぁ」
と言って、ヒカルは自分の息子の無事を確認する。
「特に傷はついてないみたいだけど、なんだか・・・ふやけてる気がする」
「ごめん・・・・・・イヤだった?」
「別にイヤだなんて言ってないだろ!・・・イヤじゃないさ・・・・。だけどさ、お前ったら
咥えたまま離さないからさぁ、食べられちゃうかと思ってあせったよ」
「食べられるものなら食べたいよ・・・・・」
アキラの思い詰めた表情を見たヒカルは、溜息をついて諭すように言う。
「ったく冗談はよせよ、もう。・・・あのな、食べたら無くなってしまうだろ?そうしたら
お互い困るんじゃねーの?」
「わ、分かっているよ、そんな事・・・冗談だよ・・・・でも本当にイヤじゃなかった?」
アキラは子供が親に分からない事を尋ねる時のように首を少し傾けながら心配そうに問う。
「イヤなんかじゃないって言ってるだろ!だいたいそんな事まじで聞くなよな・・・」
「どうして?いいじゃないか。どんな感じだったか聞かせて欲しいと思って・・・・」
「どんな感じとかさー、んな事聞くなってば!そう言うお前はどうなんだよ!?」
「・・・凄く気持ち良かった・・・」
そう言いながら、アキラはヒカルの頬に両手を添えて軽く口付ける。
その時の手の感触で、ヒカルの頬が少し濡れていることに気付き、舌でペロペロと
舐め取る。そのアキラの恍惚とした妖しい表情にヒカルは呆然と見惚れていた。
アキラは舐めて濡れた頬をシャツの袖で綺麗に拭いて、ヒカルを見上げた。
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「キミはどうだった?」
「え?ああ・・・そりゃぁ、良かったに決まってるじゃん・・・・」
そう言って恥ずかしそうに微笑む。
アキラも安心した表情でヒカルを見詰めて言う。
「もっともっとキミに気持ち良い思いをさせたい」
ヒカルは生唾を飲み込みながら恐る恐る聞く。
「もっとって?・・・どんな風に?」
「ボクも良く分からないけど・・・・試してみる?」
アキラは真剣な眼差しでヒカルを見詰め、肩に手をかけて力を入れた。
アキラには、男同士が睦み合う方法のおぼろげな知識はあるものの、具体的には全く
分からなかった。だが、ヒカルの問いかけに誘われるように本能がアキラをけしかける。
仄かな明かりの中で鋭く揺らめくアキラの瞳に引き込まれて「うん」と言いそうな
ヒカルの表情だったが、未知の行為に怖気づいたのか、ヒカルは慌てて体を後ろに引いて、
「もう今日はダメだってば。ズボンはくからな!」
と言いながら、ごぞごぞと身支度を始めた。
アキラは一瞬非難するようにヒカルを見たが、具体的な行為に自信が無かった事もあり、
それ以上の行動には出られなかった。
何よりヒカルを傷つける結果になって嫌われるのが一番恐かった。
「そうだね・・・・・寒くなって来たしね」
ヒカルは足に絡まったままの下着とズボンを身につけて、アキラは出たままになって
いた分身をズボンの中に納める。
立ち上がったアキラが、
「電気をつけるよ」
そう言って蛍光灯の紐を引っ張ると、部屋の中が急に明るくなり、嫌でも夢うつつの
世界から現実の世界に引き戻された。
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