初めての体験+Aside 46 - 47


(46)
 社が目を覚ましたとき、アキラはいなかった。身体の拘束をとかれ、きちんと布団に
寝かされていた。昨夜のことは夢かとも思ったが、身体に残る倦怠感と、腰の痛みが現実だと
告げている。ふと、辺りを見回せば、お香らしきものの燃えかすが残っていた。夕べの
甘い香りはコレだったのか…。思い出すだけで顔が赤くなるような行動の数々は、
もしかしたらこのせいだったのかもしれない。そうだと言って欲しい。それとも、自分には
ヒカルと同化願望があるのだろうか?どっちかって言うと、身体は合体させたいけど…。
 結局、三日間まともに眠れた日は一度もなかった。ふらふらと廊下を歩く社の背後から
ヒカルが飛びついてきた。
「おっはよー。」
今日も元気いっぱいだ。ヒカルもアキラと夕べしたんだっけ?アキラってタフなヤツだ。
「社、今日も目が赤いぜ…寝てないの?」
「進藤はよう寝れた見たいやな?」
社が欠伸混じりに問いかけると、ヒカルは元気よく答えた。
「うん!疲れてたのかな〜枕に頭つけた記憶ネエもん…」
なに!?じゃあ、昨日アキラが言ったことは全部ウソ?
『オレ…アイツが進藤とヤッたってゆうたから…』
あんなことや、こんなことまで……泣きそうだ…。
 その時自分はきっと情けない顔をしていたのだろう。ヒカルが手招きをした。
「?」
何だろうと思いつつ、ヒカルの目線に合わせて身体を屈める。グイッと襟元を掴まれて、
ヒカルの方に引き寄せられた。そのまま、唇が触れる。
 すぐにヒカルは身体を離した。社の耳に唇を寄せ、そっと囁く。
「大阪に帰る前に一度しような?」
悪戯っぽい笑顔が眩しい。
「…ホンマ?」
「ホンマや!」
間抜け面で訊ねる社に、ヒカルはおどけて返事した。幸せを実感した瞬間だった。


(47)
 しかし、幸せは長くは続かない。社の場合は、朝食が終わるまでの命だった。
「え?進藤、帰るんか?」
ヒカルは、北斗杯の前に一旦家に戻ると言う。それから、ホテルに向かうのだ。
 そうすると…それまでアキラと二人切り?全身から血の気が引いた。
「あ…そろそろ帰らネエと…」
ヒカルはパンを頬張った。ミルクでそのまま流し込む。
 社の頭の中は真っ白だった。いつもは小鳥の囀りのように聞こえるヒカルのおしゃべりも
耳に入らないくらい動揺していた。
 「じゃ、また後でな。」
ヒカルは元気よく塔手を振って、塔矢家を後にした。社は呆然とその後ろ姿を見送った。
同じようにアキラも手を振って見送る。社と違って、こちらはニコニコと笑っていた。
「進藤って、本当に可愛い…そう思わないか?」
突然、話を振られて社は狼狽えた。非常警報が頭の中で鳴り響いた。
「そ、そうやな………さて…と…オレ…オレもそろそろ行こかな…」
「まだ、早い。」
間髪入れずに、却下された。
「そやけど…オレ…道知らんし……」
「ハハハ、ボクと一緒に行くんだから関係ないよ。」
怖い。目ェ笑ろてないし…。ライオンの檻に入れられたウサギの気持ちがよくわかる。
逃げ道は、すべて塞がれた。
 「それじゃあ……時間まで、昨日の続きをしようか?」
アキラの顔が目の前に迫ってきた。社の意識はそこで途切れた。

おわり



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