無題 第2部 47
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いつもは起こされないと起きられない事が多いのに、今朝に限って随分と早く目が覚めてしまった。
「何だ、まだこんな時間かぁ…」
朝日の射し込んでいる部屋で、ヒカルは小さくあくびをした。
「なんでこんな早く目ェ覚めちゃったんだろ?」
―コイツのせい、かな?
そんなヒカルの思惑など気付くはずもなく、アキラはスヤスヤと寝息をたてている。
寝ているアキラを起こさないようにそっとベッドから抜け出し、しゃがみこんでアキラの寝顔を眺めた。
―へぇ…コイツって、キレイな顔してるんだな…
カーテン越しの淡い光がアキラの顔の上でゆらゆらと揺らめいている。
ヒカルは、完璧とも言っていいその造形にしばし、見惚れていた。
―でも、寝てるといつもよりはちょっと子供っぽいカンジだな。
少しイタズラ心を起こして、つん、と頬をつついてみた。
「ん…」
小さな声を漏らし、若干、横を向いていたアキラの顔がヒカルの方を向いた。
ドキッとした。僅かに半開きになった、形の良い薄紅色の唇から、目が離せない。
つややかなその唇が、まるでヒカルを誘うように、かすかに動いた。
ドキドキと心臓が激しく脈打っている。ヒカルにはまるでその音が部屋全体に響いているように感じ、
寝ているアキラにも聞こえてしまうのではないかと心配になった。
しかも、それだけでは済まず、その脈動が股間にも伝わっていくのを、ヒカルは感じた。
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