| Shangri-La 47
 
 (47)
ヒカルの意識が覚めたのは、6時少し前のことだった。
 目は開かないが、病院での習慣として身に付いた起床時間だ。
 何気なく伸ばした手が、空を切る。
 その違和感に弾かれたように飛び起きると、
 ヒカルは一人、自室のベッドの上だった。
 慌てて周囲を見渡すと、アキラがすぐ目の前で
 ベッドの端にやっと引っ掛かるように両腕をついて
 こちらを見るようにして眠っている。
 
 なんでこんなところで寝てんだろ、と考えながら
 アキラの頬を指でそっと押すと
 頬の肉が寄って、アキラの端正な顔が少し歪んだ。
 
 本当なら昨日は、一人でゆっくりこれまでのことを整理するはずだったのに。
 いろんな事がありすぎて、頭がいっぱいだったのに
 コイツが無理やり割り込んできて、全部追い出して好き放題して…
 ったく、何なんだよ。まったく……勝手だよなぁ。
 
 今度は、頬を軽くつまんでみる。
 (ぶっ……変なカオ…)
 アキラが起きてこのことを知ったら怒りそうだ。
 秘密の形をしたアキラの顔に、少しだけ和んだ。
 指を放してアキラに声をかけ、ベッドで寝るよう促すと、
 アキラは驚いたように目を見開いて、ヒカルを見つめた。
 
 
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