誘惑 第三部 47
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軽く脱力してると、アイツがオレの手をとって、甲にそっとキスされた。
「塔矢…?」
名前を呼ぶとアイツは上目遣いにちらりとオレを見上げ、そのまま舌先で触れ、唇を滑らせた。
それから指の根元を舐め、唇で食み、甘噛みする。思わず目を瞑って、オレはアキラの与える
もどかしい刺激に耐えた。
「と…や、…もう……」
耐え切れずに目を開けると、それを知っていたかのように覗き込むアイツの目は濡れて黒く妖し
く光っていた。恐ろしくて、けれど目をそらせない。そしてオレを見たまま、ペロリとまた舌を動か
す。その感触にオレが身じろぎすると、アイツの目がふっと細くなる。アイツは満足げにゆっくり
と笑うと視線をオレの手に落とし、丹念に、美味そうにオレの手を、指を舐め、しゃぶり続ける。鋭
い痛みを感じてオレは思わず小さく悲鳴を上げた。アイツの尖った犬歯がふやけた皮膚を食い
破ったんだろう。
咄嗟に手を引いてしまって、オレの手は塔矢から開放される。と、塔矢が顔を上げて、すごい目
付きでギロリとオレを睨んだ。が、オレを見ると、にっと笑って舌先で自分の唇を舐めた。
こんな塔矢を誰が知っているだろう。欲望を隠しもしない獣じみた眼。鮮血の滴る新鮮な肉を前
にしたみたいに唇を舐める紅い舌。心臓が縮こまりそうな程強烈な視線に晒されてオレが動けず
にいると、今度は一気に体勢を入れ替えられた。
ちらちら揺れる炎を奥に隠した黒い瞳がオレを見下ろしている。
獰猛で飢えた獣のような瞳の色にざわりと背筋が震えた。
恐怖とも恍惚ともわからぬ震えにわななく獲物の、怯える様さえ楽しむように、じんわりと肩を抑
えつけて見下ろしていたかと思うと、急に肩に文字通り齧りつかれて、鋭い痛みに思わず悲鳴を
あげた。そこをぴちゃぴちゃと音をたてて舐め続けながら、アイツの手がオレの胸元を摘み上げ
る。そしてもう片方の手は知らないうちに下半身に降りてきて、勢いを取り戻しかけているオレを
乱暴に弄る。
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