Shangri-La第2章 47 - 49
(47)
アキラはヒカルのシャツを脱がせにかかった。
ボタンも留めずに羽織っているだけのそれは、背中から
襟元を掴んで引くと、思ったよりあっさりと両腕から外れた。
しかし、パジャマを着せるとなると、手がかかりそうだ。
「進藤…、パジャマぐらい、自分で着てくれないかな?」
一応声をかけてみたものの、ヒカルは身じろぎすらしない。
軽い溜息の後、シャツを抜いたままになっている両腕に
ボタンを外した上着の両袖を通して、何度もひっかかりながら
そろそろと引き上げ、なんとか肩までかけることが出来た。
ボタンをかけてやりたいが、うつ伏せではそれもできない。
(うーん…………、まぁ、いいかな、後でも)
だんだん面倒になってきたアキラは、パジャマの前は
あっさりとあきらめ、ヒカルのベルトを外し始めた。
ジーンズのボタンを外し、前を緩めて
ウエストに手をかけたところで、ふっと思う。
(これを下ろしたら、下着…、だよね……)
握った手が、微かに震えた。
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暫くそのままでいたが、小さく掛け声をかけながら
思い切りぐいっと、折られた膝まで一息にジーンズを下ろした。
相も変わらず細い腰が、下着一枚だけでこちらに突き出されている。
前に、ヒカルを風呂に入れて、全身洗ってやったときの感覚が
ふと頭を掠めて―――奇妙な動悸がする。
慌ててぎゅっと目をつむって首を振り、深呼吸すると大きく叫んだ。
「進藤!寝間着ぐらい自分で着てくれ!
布団にぐらい自分で寝られないのか!!!」
とは言っても、後半は掠れて声にもならなかったのだが…。
少しして、ヒカルは答えるように唸りながら
仰向けにころりと転がって、
そしてまた一人、瞼の奥の世界へ引き返してしまった。
何度呼んでも、最早ぴくりとも反応してはくれない。
そんな様子に、アキラは荒く吐息をつき
思いっきり唇をつきだしながら、ジーンズを脱がせて
難儀しながらパジャマのズボンを無理やり履かせた。
さらに上着のボタンもかけてから、
無理やりヒカルを布団の中に押し込んだ。
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「もうっ!何だよ何だよ何だよっ!!!」
顔も目も、耳まで真っ赤にしてアキラはヒカルに怒鳴りつけた。
(…ったく、人の気も知らないで……)
それでも変わらず、気持ちよさそうに眠っているヒカルの目には
唇をこれ以上ないほどに尖らせて、
泣きそうなほどに潤んだ瞳で睨みつけるアキラが映るはずもない。
アキラはしばらくそのまま立ち尽くしていたが、
どうにもならず、結局、先程までヒカルのいた座椅子に座り、
傍らに置かれた、冷めきったお茶の入ったカップを取った。
別に、何がしたかったわけでも、何をして欲しかったわけでもない。
そう思ってはいるのだが、やはり目の前に居ると
色々と期待せずにはいられない。
「あーあ、ボクももう寝ちゃおうかなぁ…」
眠るにはあまりに早い時間だったが、ヒカルが眠ってしまった以上
する事もないし、ただここでこうしていても、もやもやするばかりだ。
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