初めての体験 47 - 49
(47)
「あぁ…はぁ…はぁ…あぅ…!」
再び、桑原がヒカルの中で動き始めたが、もうヒカルにはどうでもよかった。
男達の手が、ヒカルにかかった精液をその胸や腹に塗りこむように体中をさすった。
「ああ…やだ…や…」
「かわいい…かわいいよ…ヒカルタン……」
二人の譫言のような呟きが、ぼんやりとしたヒカルの頭の中に届いた。
翌日、痛む腰をさすりながら、ヒカルは仕事をこなしていた。昨日と同じく指導碁だ。
最初ヒカルは警戒していたが、幸いなことに、桑原達は会場には現れなかった。
どうやら、満足したらしい。『あんだけ、やれば当然か…ジジイのくせにタフだよな…』
(48)
「進藤!」
突然、呼びかけられた。よく知ったその声にヒカルの表情がパッと輝く。アキラであった。
「塔矢…!どうして…?」
「どうしてるかと思って、様子を見に来たんだ…。迷惑だった?」
ヒカルは思い切り首を振った。
「すっげえ嬉しい!おまえと一緒だったらってずっと思ってたから…」
ヒカルが満面の笑みを浮かべて、アキラに答える。それがあまりにも可愛くて、アキラは
正面から見ることが出来ず、顔を赤らめて、視線を落とした。
「あれ…?進藤、腰どうかしたの?」
ヒカルの手が腰をさすっているのが目に入った。
「あ…これ…?昨日、桑原先生に指導碁のつきあいさせられてさ…もう、何時間もずっと
…腰が痛くなっちゃって…」
「桑原先生…来てるの?」
「休養だってさ……あんな元気な爺さんに、そんなもん必要ねェよ!」
ヒカルが珍しく不機嫌そうに返事をする。アキラは、よほど大変な目にあったんだなと
同情し、ヒカルの頭を撫でた。
「でも、もういいや。塔矢が来てくれたしね。」
アキラに優しく慰められて、ヒカルも機嫌を直した。鼻歌混じりで、中断していた仕事を再開する。
アキラは邪魔にならないように、ヒカルの脇に立った。ヒカルがチラッとアキラに
視線を投げて、はにかむように笑った。
アキラはヒカルの笑顔に、ガッツポーズをした。もちろん、心の中でだが…。
そして、ヒカルも、心の中で手帳の注意事項を書き足した。
桑原本因坊……その二 ろうかいな作戦に(以下略)
伏兵にも要注意だ!ゴルァ(゜Д゜)
<終>
(49)
「進藤、ちょっと話がある。」
研究会の後、師匠である森下がヒカルに声を掛けてきた。森下は少し怒っているように
見えた。『オレ…何かしたっけ…?』ヒカルは、きょとんとした顔で森下の顔を見返した。
森下は苦々しげに言った。
「お前、最近、塔矢アキラと会っているそうだな?」
ああ…そのことか。と、ヒカルは思った。ただ会っているだけじゃなく、付き合っていると
知ったら、森下はどんな顔をするだろうか?それを想像して、ヒカルはクスクスと
忍び笑いを漏らした。
「…!?何が可笑しいんだ?」
「何でもありません。」
ムッとしている森下に、すました顔で答えた。
「どうなんだ?」
ヒカルのそんな態度が癪にさわるのか、森下はヒカルを厳しく問いつめてくる。
白状するまで帰さないといった雰囲気である。何だか可笑しかった。
逆に、ヒカルは森下に問い返した。
「先生…先生こそ、どうしてそんなに塔矢門下を気にするんですか?」
「そ…それは…!」
ヒカルは、森下が塔矢行洋にライバル意識を持っていることをもちろん知っている。
そして、知っていて敢えて挑発するようなことを続けて言った。
「オレ、塔矢門下の人たちと仲良くしたいな…塔矢先生もすごい人だし…」
「何?」
ヒカルの挑発に森下は簡単に乗ってくる。
「オレ…この前、塔矢先生に一局打って貰ったんですけど…すごかったな…」
森下の顔色が変わった。自分の門下の秘蔵っ子が、ライバルを惜しげもなく褒めちぎる。
森下は行洋が嫌いなわけではない。ライバルであり、尊敬している相手でもある。だからこそ
負けたくないのだ。
そんな森下をヒカルはさらに煽った。
「やっぱり塔矢先生は別格というか…違う気がする…」
「!!」
ヒカルは、森下を横目でチラリと見た。そして、「何を―――!」と怒鳴りかけた森下を制した。
「先生…オレと一局打ってください…塔矢先生よりすごいかどうか見せてください…」
と、言うが早いか森下の唇を奪った。
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